馨が金で千春は銀、伊調2人で日本初の姉妹メダル

伊調馨 レスリング女子63キロ級で伊調馨(20)が金メダルを獲得。48キロ級では馨の姉、伊調千春(22)=いずれも中京女大=が銀、日本五輪史上初の姉妹メダルの快挙を遂げた。〔写真右:姉の銀を超え妹・馨は金メダル。姉妹メダルで喜びも2倍に=撮影・鈴木健児。同下:伊調千春=右=は無念の判定負け。銀メダルにも笑顔はなかった。左は審判に抱きついて歓喜するメルニク=撮影・鈴木健児



 金メダルへのカウントダウン。第1ピリオドで失った2ポイントを第2ピリオドで挽回し、残り23秒で伊調馨がついに逆転。「千春がいたから、千春から勇気をもらって攻めることができた」。6分間の死闘の終わりを告げるブザーにガッツポーズを作った。表彰台で涙を流す妹の晴れ姿に、見守っていた3歳上の姉の千春ももらい泣きだ。

伊調千春 「馨は尊敬するアスリートです」と千春が称えれば、馨は「千春はライバル」と一度もおねえちゃんと呼ばない姉妹。悲願の正式競技となったアテネ。「2人で金」と誓ってきた姉が、自身が出陣する約1時間前の48キロ級決勝でまさかの敗北を喫する。「こうなりたくない、と思って気合を入れてほしい」。願いは目標を失ってぼう然とする馨の元に届いた。

 姉の背中を追い、故郷の青森・八戸クラブで、「おしめを付けていた頃から始めた」というレスリング。小学校時代は男の子を相手に全国少年選手権で4連覇。「馨は天才だもん」が口癖だったが、初の国際大会だった02年の釜山アジア大会で日本勢でただ1人、金メダル獲得に失敗。世界の壁の厚さを痛感した。

 「自分の足りない部分が分かった。もうあんな思いはしたくない」。仲間から「カオリン」と呼ばれるおおらかな馨が、この挫折で変わる。高校時代からの恩師で、今大会のセコンドの栄和人・中京女大コーチ(44)は、「最近は筋トレを自分から進んでする。天才が本気になれば強い」と笑顔で2年前を振り返る。

 姉と2人でライバルをビデオで徹底分析するのが日課。遊びたい年頃の思いを抑え、2人でマットに青春を捧げてきた。「早く結婚して、専業主婦でのんびりしたい」。6月で20歳になったばかりの若き女王がささやかな夢をかなえるのは4年後の北京で、「五輪の銀でもうれしくない」と悔し涙を流した姉との誓いを果たしてからだ。

 伊調 馨(いちょう・かおり) 1984(昭和59)年6月13日、青森県生まれ。20歳。姉・千春の影響で3歳の時にレスリングを始め、中京女大付高から中京女大。02年釜山アジア大会2位。昨年は世界選手権、全日本選手権で2連覇を達成した。1メートル66。


決勝VTR
 序盤は互いに頭を突き合わせて膠着状態が続いたが、2分12秒でマクマンがバックを取って伊調馨の体勢を崩し1ポイント。その後、第1ピリオド終了寸前にもタックルからバックを奪ったマクマンが1ポイントを追加。0−2で第2ピリオドに入ると、スタミナに勝る伊調が優勢になり、4分、5分にそれぞれバックを奪って同点に持ち込む。そして5分37秒、タックルからバックを奪って1ポイントを獲得。逆転の3−2で勝利の権利を得て、そのまま押し切った。


 伊調 千春(いちょう・ちはる) 1981(昭和56)年10月6日、青森県生まれ、22歳。兄・寿行さんの影響で5歳からレスリングを始め、網野高から中京女大。00、01年世界ジュニア選手権優勝。昨年の世界選手権は51キロ級で初優勝した。1メートル57。


決勝VTR
  第1ピリオド40秒過ぎにメルニクがバックを取って1ポイントを先取したが、終了2分前で伊調千もバックを取り返して同点に追いつく。第2ピリオド、伊調が4分50秒過ぎにバックを取って1ポイント追加。そのまま制限時間は終了したが、勝利のノルマとなる3ポイントに達していないため延長戦に。6分40秒過ぎ、メルニクがバックを取って1ポイントを取り再び同点。そのまま9分が経過して判定決着となり、ルールでパッシブ(消極性)が1度あった伊調の負けが決まった。


★日本の兄弟・姉妹メダリスト★

 過去にそろって金メダルを獲得した兄弟、姉妹はいない。メダリストでは三宅兄弟の兄・義信が60年ローマ大会重量挙げで銀、64年東京大会、68年メキシコ大会で金。弟・義行がメキシコで銅を獲得した。柔道の中村兄弟は96年アトランタ大会で兼三(三男)が71キロ級で金、行成(二男)が65キロ級で銀。伊調は、「姉妹」では初めてのケースとなった。

 今大会では陸上ハンマー投げに室伏広治、室伏由佳の兄妹が出場したが、メダルは兄の銀のみに終わった。

 海外では米国のビーナス、セリーナ・ウィリアムズ姉妹が、00年シドニー大会のテニス女子複で金。同じ米国のアルビン、カルビン・ハリソンの双子の兄弟は、シドニー大会の陸上男子1600メートルリレーで金。92年バルセロナ大会では、双子のサラ、カレン・ジョセフソン姉妹(米国)が、シンクロナイズドスイミング・デュエットで金メダルを獲得。同種目の銀も双子のペニー、ビッキー・ビゴラス姉妹(カナダ)だった。今大会では、米国のポール、モーガン・ハムの双子兄弟が、体操男子団体で銀メダルを獲得している。



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