【テコンド−】岡本依子、個人資格での五輪派遣を決定
涙でアテネ五輪出場を訴えていたテコンドーのシドニー五輪銅メダリスト・岡本依子(32)=ルネスかなざわ=に朗報が届いた。日本オリンピック委員会(JOC)は5日、幹部会を開き、岡本を個人資格で五輪に派遣することを決定した。国内統括団体が分裂した現状のまま、オリンピック憲章の細則を適用しての特別措置。国際オリンピック委員会(IOC)と世界テコンドー連盟(WTF)の承認が必要だが、五輪連続メダル挑戦の道が開かれた。〔写真:アテネへの道が開けた岡本。涙から、笑顔へ〕
★両親が集めた署名は、無駄にならず
待ちに待った朗報は海を越え、韓国ソウルで合宿中の岡本にもたらされた。所属会社を通じコメントを発表。6日には現地で喜びの記者会見を開く。
「本当ならば大変うれしいです。たくさんの方からご支援をいただき、本当に感謝しています。気持ちを切り替えて、アテネ五輪で金メダルを獲れるよう頑張ります」。流し続けた涙、そして両親が集めた9万5762人分の署名は、無駄にはならなかった。JOCの竹田恒和会長=写真=は「JOCとして独自の判断で岡本選手を派遣させる。個人資格による特別派遣の救済措置だ」と発表。全日本協会と日本連合が統一しなければ選手を派遣しない−とした3月18日の理事会決定を撤回した。IOCとWTFの承認を得る手続きを進め、28日の資格認定申請(第1次エントリー)に間に合わせたい考えだ。
★「国内団体は存在しない」との解釈
同会長は1日にカナダでジルベルト・フェリIOC五輪統括部長と会談し、「オリンピック憲章」規則49(別掲)の細則について確認。「我々の見解と違い、『国内団体』とはJOCが承認した団体という見解だったので、岡本選手を送れる現実味が出てきた」。JOCは88年に日本テコンドー連盟(当時)に準加盟資格を与えたが、同連盟が分裂したため昨年9月に取り消しており、「国内団体は存在しない」との解釈が成り立った。
★外圧や世論の後押しも
岡本が所属する全日本協会会長の衛藤征士郎衆院議員の働きかけで、河村建夫文科相や小泉純一郎首相が「岡本派遣」を望む発言をするなど、外圧や世論の後押しもあって急転決着。が、テコンドー団体の分裂問題は棚上げとなり、今後も悲劇が繰り返される余地は残されたまま。「一貫性がない」との批判もあるが、竹田会長は幻のモスクワ五輪・馬術代表。資格があるのに五輪に行けない悔しさを知っていた。女子67キロ超級の五輪出場枠を獲ってきた岡本に、曲折を経てようやくアテネへの道が開かれた。
★五輪個人参加
五輪憲章は細則で「競技の国内団体が存在しない場合は国内オリンピック委員会(NOC)が選手を個人資格でエントリーできる」と定めている。今回のテコンドー問題では、統括団体分裂の状態にこの細則を適用する。国際オリンピック委員会(IOC)理事会と国際競技団体の承認を受けることが条件。日本がボイコットした80年モスクワ五輪前には、一部で特例となる個人参加や個別参加を目指す動きがあったが実現しなかった。
★そのとき
岡本の父・浩さん(62)は母・浩子さん(59)と大阪・門真市の自宅で朗報を受け、「乾杯と叫びたい気分」。両親は関係者とともに大阪などで署名活動をし、先月29日に署名と陳情書をJOCに提出した。「署名していただいた皆さん、JOCの方々に感謝の気持ちでいっぱい。今度は依子が一人で頑張る番です」と、浩さんは愛娘のアテネでの活躍に期待を寄せた。
◆福田富昭・JOC選手強化本部長 「政治家の発言で動いているわけではなく、国民の声として受け止めた。テコンドー界の問題であるが、彼女(岡本)を何とか救えないかということで、JOC独自の判断を出した」
◆河村建夫・文部科学相 「良かった。これで岡本選手もアテネに行って、思い切り力を発揮していただけるだろう。ぜひ頑張ってもらいたい。統括団体の問題はJOCが引き続き努力してくれると思うので、これ以上とやかく言うことはない」
★両団体も歓迎
岡本が所属する全日本協会は5日、衛藤征士郎会長らが「JOCの英断に対し、深く感謝しております」と会見で話した。佐藤圭司事務局長は「脱退した方がスムーズにいくなら、それでいい」と、岡本の離脱も積極的に受け入れる方針を改めて明言。衛藤会長は世界連盟への協力要請で、近日中に渡韓するという。
一方、日本連合側は、森喬伸会長が「どういう理由であろうと、岡本さんが五輪に行けるのはいいこと。ただ、国内団体がないと判断した理由と今後どうするかの説明をJOCに聞きたい」とコメントした。
★これまでの経緯
| 2月14日 |
アジア予選(バンコク)で岡本が女子67キロ超級2位となり、五輪出場枠を獲得 |
| 18日 |
JOC理事会で、3月末までに協会と連合が統一すること五輪派遣の条件と決定。岡本の両親らは署名活動を開始 |
| 26日 |
河村文科相が「統一と派遣は切り離すすべき」と発言 |
| 30日 |
岡本が欧州遠征から帰国。涙ながらに「アテネに行かなきゃいかんと思ってます」と訴えた |
| 31日 |
両団体の統一はならず。小泉首相も岡本派遣を求める発言 |
| 4月1日 |
JOCは、両団体の統一期限を25日前後まで猶予し、両団体が解散すれば五輪派遣可能との見解を示す。岡本は「可能性があるだけでも天国のような気持ち」と号泣 |
| 3日 |
竹田会長がカナダから帰国。個人資格での派遣は可能との見解を示す |
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