五輪初の「完全」、上野は22日中国再打倒だ

上野由岐子投手 ソフトボールは20日、1次リーグ最終戦を行い、日本は上野由岐子投手(22)=日立&ルネサス高崎=が五輪史上初の完全試合を達成して中国を2−0で下し、3位でページシステムによる決勝トーナメント進出を決めた。1位米国、2位豪州、4位中国となり、日本は22日の準決勝で中国と対戦する。〔写真:上野は速球を主体に五輪史上初の完全試合を達成。準決勝進出の立役者となった=AP



 負けられない。その気持ちが上野を強くした。五輪史上初のパーフェクトゲーム。背水の登板にもあわてない、動じない。22歳の若きエースが、追い詰められた宇津木ジャパンを救った。

 「プレッシャーが逆に力になった。きょうは強い気持ちになれた」

 負ければ1次リーグ敗退が決まる中国戦。序盤からMAX117キロの世界一の快速球がさえた。打者21人に対して、三振9、内野ゴロ10、内野フライ1、外野フライ1。まさに満点ピッチ。七回二死まで無走者に抑えながら、延長八回に敗れた17日のカナダ戦の雪辱を最高の形で果たした。

 普段は物静かだが、内には熱いものを秘めている。小学3年から始めたソフトボール。すぐに熱中した。そんな娘のために父・正通さん(48)は「1人でも練習ができるように」と、福岡市内の自宅のガレージにネットを張ってくれた。

 6年生の時には、所属チームを代表して、福岡ドームで行われたダイエー戦で始球式の大役を務めた。出番前のキャッチボールの相手をしてくれたのはホークスの顔だった秋山幸二外野手。感激した。また一段とソフトボールにのめり込んだ。

 中学3年の卒業式ではクラス代表で答辞を読んだ。「オリンピックに出ます!」。その夢は7年でかなえた。でも、まだ満足はできない。

 「前回のカナダ戦は我慢しきれずに負けた。きょうは最後まで我慢し、低めを意識して投げた。きょうの勝利でチームはまたひとつ強くなると思う。これからも一戦一戦です」

 4強によるサバイバルマッチの決勝トーナメント。22日の準決勝ではメダルをかけて再び中国と対戦する。低空飛行だった宇津木ジャパンを上昇気流に乗せたエースの奮投。本当の勝負はこれからだ。

臼杵孝志


 上野由岐子(うえの・ゆきこ) 1982(昭57)年7月22日、福岡市南区生まれ。22歳。小3でソフトボールを始め、柏原中、九州女子高で全国制覇。99年世界ジュニア優勝メンバー。01年に全日本に選出され、宇津木妙子監督率いる日立高崎(現・日立&ルネサス高崎)に入社。02年世界選手権の出中国戦で完全試合を達成。日本リーグでは01年新人賞、02年MVP、最多勝。1メートル73、70キロ。右投げ右打ち。


 ◆宇津木妙子監督 「きょうは上野に感謝したい。打線はワンチャンスをものにできるようにしないとね。がけっぷちだったことは確かだが、負けるとは思っていなかった」

宇津木麗華★41歳・宇津木麗華がようやく初打点

 22歳のエースを41歳のベテラン、宇津木麗華が援護した。五回二死一、二塁で左前に運び、貴重な先制点を刻んだ。1次リーグ最終7戦目にして初打点。「野手も頑張っているけど大事な場面であと1本が出ない。何とかしたいと思っていた」。宇津木妙子監督を慕って16年前に中国から来日。平成7年に日本国籍を得たベテランは「自分にああいう場面が巡ってくると思っていた」と興奮を隠せなかった。

写真:五回に決勝タイムリーを放つ宇津木。日本の主砲が7試合目で初打点を挙げた=撮影・塩浦孝明

★デーブ大久保★

 日本リーグでノーヒットノーランは何度か見たけど、完全試合というのは初めて。上野投手は、緩急をつけて投げていましたね。

 野球以上に、ソフトボールは緩急が大事。マウンドからホームまでの距離が短い分、打者は速い球に合わせようとするんです。日本はセーフティーバントを多用しますが、他のチームはほとんどブンブン振ってくる。だから、遅い球に対応できないんですよ。

 準決勝はまた、中国との対戦ですね。先発投手は変わるだろうけど、配球は変えないでほしい。次は打たれるような錯覚に陥りますが、相手の打者だって同じ攻め方でくるかは読めないもの。プロ野球の3連戦でも、打たれるまでは配球を変えません。

 ようやく各選手とも、自分で考えて動くようになってきました。これからは一発勝負になりますが、負けたら監督の責任というくらいの気持ちで戦ってほしいですね。

96年アトランタ五輪ソフトボール日本代表コーチ、サンケイスポーツ専属評論家

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