【柔道】井上康生、アニキ倒して堂々V−アテネ内定!

井上康生=上 柔道・全日本選抜体重別選手権(4日、福岡市民体育館)五輪連覇へ関門突破だ! 2人の世界王者が参戦した100キロ級はシドニー五輪金メダリストの井上康生(25)=綜合警備保障=が兄・智和(28)=警視庁=との兄弟対決を制し、3年ぶり3度目の優勝。世界選手権無差別級王者・鈴木桂治(23)は準決勝で智和に一本負けした。アテネ五輪代表は29日の全日本選手権後に決まるが、康生の五輪切符は確実となった。

写真右:兄の智和(下)を下した康生が、アテネ行きを確実にした。五輪連覇へ、国内の関門をクリアした。同下:アテネを目指した鈴木(下)は康生の兄に完敗。まさか…だ

 シナリオは変更されても結末は変えない。ライバル対決から兄弟対決となった100キロ級決勝。1分21秒、3歳上の兄・智和を大内刈りで沈め、康生がアテネ行きの切符に手をかけた。

 「常に挑戦者の柔道をやっていくだけ。応援してくれる人たちに恩返しするためにも、アテネで金メダルを獲りたい」

鈴木桂治=下 準決勝で兄が鈴木に一本勝ち。01年大会以来、3年ぶり3度目の兄弟対決(過去1勝1敗)が実現した。その一方で五輪切符を争う鈴木との直接対決はまさかの消滅。張り詰めていた心の糸は切れそうになった。

 「やりたい気持ちはあったが、桂治が負けてホッとした部分もあった。これじゃあいけない、と反省し、もう一度気持ちを引き締めた。兄には手加減しろよ、と言われたんですけどね…」

 決勝の舞台に上がる前、並んでいた兄にささやいた。「思いっきりいかせてもらいます」。これでモヤモヤは晴れた。結果は3試合オール一本勝ちの完全優勝。100キロ級の五輪代表は全日本選手権後に決定するが、(1)この日の優勝内容(2)鈴木の完敗(3)過去の実績−どれをとっても死角なし。斉藤仁・日本男子監督は「みなさんが考えている通り。100キロ級は井上が大きくリードした」と当確ランプを灯した。

 ライバルは自分だった。3月3日の練習中に軸足となる左ひざを負傷。「いろいろな壁があった」と言葉を濁すが、恩師の山下康裕氏は「まだ背負い投げができない状態。本人もかなり悩んでいたようだが、その中で抜群の集中力をみせた」と愛弟子の奮闘を評価した。手負い状態でも強い。“世界の康生”の実力は、抜きんでている。

 次の目標は4連覇を目指す全日本選手権。宮崎から駆けつけた父・明さんも「康生の真価が問われる大会。その結果で北京まで頑張る気持ちになると思う。そういう子なんです」と言う。己との闘いを続ける孤高の王者。その視線は五輪連覇を目指すアテネを通り越し、08年北京まで見据えている。

(臼杵孝志)

 ★そのとき★ 3度目の兄弟対決を見つめ、父・明さん(56)は涙を流していた。「智和が意地を見せてくれたのがうれしかった。今までの兄弟対決と違い、きょうの決勝はさわやかな気持ちで見てました。結果はあれで当然ですよ」。2日に宮崎市内の神社に必勝祈願をして会場入りした。「去年は(亡妻・かず子さんの)墓参りも神社も行かず麻雀してたら、康生が負けてしまったんでね」。熱血父も必勝パターンを復活。井上家は一丸になって2度目の五輪に挑む。

 ★井上 康生(いのうえ・こうせい)★ 1978年(昭和53年)5月15日生まれ、宮崎・都城市生まれ、25歳。父・明さんの影響で5歳で柔道を始める。大宮中→東海大相模高→東海大を経て、綜合警備保障。99、01、03年世界選手権金メダル。00年シドニー五輪金メダル。01−03年全日本選手権優勝。今年3月、東海大大学院体育学修士課程を終えて博士課程に進む。1メートル83。

 ★兄弟頂上決戦★ 大相撲では若貴兄弟が95年九州場所の幕内優勝決定戦で対決。兄・若乃花が下手投げで貴乃花を下して優勝した。剣道では宮崎正裕、史裕兄弟が全日本選手権決勝で対決。93年は兄・正裕が、97年は弟・史裕が兄弟対決を制して優勝した。プロボクシングでは93年に行われた日本ミニマム級王座決定戦で江口九州男、勝昭の兄弟対決が実現。兄・九州男が6回KOで勝った。

★決勝敗退も…兄、男の意地の援護射撃

 波乱のドラマを演出したのは“井上兄”智和だった。過去6戦全敗の鈴木を「あの技しかないと狙ってた」という谷落としであおむけにし、ガッツポーズ。父から「鈴木選手に負け続けたままでいいのか。男の意地を見せなければ親子の縁を切る。康生を援護射撃してみろ」と檄を受けての劇勝だった。決勝は弟に完敗したが「形相がすごくて気迫負けした」とサバサバ。今後は五輪まで付き人をして康生をサポートするという、強くやさしい兄だ。

★鈴木「力不足です」世界王者同士対決…消えた

 世界王者同士の代表決定戦という夢の一戦は、あえなく消えた。鈴木は康生と対戦することなく、その兄に敗れて畳を去った。準決勝2分58秒、投げ技を仕掛けようとした瞬間、谷落としで叩きつけられた。

 「力不足です。自分には康生さんのところまで行く権利がないということです」。3日前に左手中指じん帯を痛めていたが、言い訳はしない。

★アテネへ残るは100キロ超級で…

 100キロ級代表の座は絶望的だが、五輪への夢は残っている。昨年の世界選手権で体重を110キロに増やして無差別級を制しただけに、100キロ超級でアテネを狙える。それには体重無差別で争う全日本選手権で棟田康幸ら100キロ以上の巨漢に勝つことが条件だ。

 「去年の康生と同じ立場。康生にできておまえにできないことはない」と恩師の斉藤監督に励まされ、ラストチャンスに挑む。

★棟田、決勝で優勢負け「これが今の実力」

 100キロ超級の世界王者、棟田康幸(警視庁)は決勝でまさかの優勢負け。3度の指導を受けるなど精彩を欠く内容で、1回戦では両者4度の指導で異例のゴールデンスコア方式による延長戦も経験した。「これが今の実力。自分に腹を立てるなんて次元じゃない。そんなの超えている」。全日本選手権では、100キロ超級での五輪出場を目指すことになる鈴木との対戦が待つ。「このままじゃ問題にならない。すべてが悪い」と危機感を募らせていた。

 ★アテネへの道★ 100キロ級の井上、100キロ超級の棟田、無差別級の鈴木と3人の世界王者による激戦を考慮し、100キロ級代表は全日本選手権後に100キロ超級とともに発表される異例の措置が取られた。ただ、選抜体重別で井上との直接対決が予想された鈴木が準決勝で敗退。無風となった100キロ級は井上のアテネ行きが事実上決まった。全日本選手権は順当に行けば準決勝で鈴木と棟田が対戦、勝者が100キロ超級の代表に大きく近づく

 ▼100キロ級準決勝
井上康 (5)
(綜合警備保障)
内また
12秒
穴  井(3)
(天理大)
井上智 (4)
(警視庁)
谷落とし
2分58秒
鈴  木(5)
(平成管財)
 ▼同決勝    
井上康 (5)大内刈り
21秒1分
井上智 (4)
※井上康は3年ぶり3度目の優勝
 ▼100キロ超級準決勝
棟  田(4)
(警視庁)
優 勢高  橋(4)
(旭化成)
生  田(4)
(綜合警備保障)
大外返し
1分33秒
 森  (4)
(北海道警)
 ▼同決勝    
生  田(4)優 勢棟  田(4)
※生田は初優勝


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