【柔道】谷でも金! 夫の前でYAWARA連覇!!

谷亮子 連覇だ! アテネ金1号だ!! 柔道女子48キロ級は谷亮子(28)=トヨタ自動車=が決勝でフレデリク・ジョシネ(フランス)を破り、夫で野球代表の谷佳知(31)=オリックス=が見守る前で日本女子選手として初の五輪連覇を飾った。谷に続いて男子60キロ級の野村忠宏(29)=ミキハウス=も3連覇を達成。五輪発祥の地で、ニッポン柔道の最強神話が復活した。〔写真:2度目の金メダルの味も格別。五輪連覇を果たした谷は、笑顔でメダルにチュッ=撮影・奈須稔



 歓喜のカウントダウンで勝利のブザーが聞こえない。日の丸で埋まった約8000人収容のアノリオシア・ホール。ひと際高くなった歓声で谷は2つ目の金メダルを知った。スタンドの夫に向かってジャンプ。五輪V2を全身で報告だ。


 「シドニーのときより何倍もうれしい。あらゆる面で応援してもらい、それを力に変えてきた。谷亮子として世界チャンピオンになれてうれしい」。シドニーから4年、五輪発祥の地で日本女子初の五輪連覇を成し遂げたヒロインは涙でくしゃくしゃだ。

 直前に襲った悪夢もドラマにした。7月12日に左足首を負傷。『左足腓骨(ひこつ)筋腱損傷』の診断だったが、実は周囲のじん帯2本が断裂していた。重傷を隠し続けた3週間。「より柔道がやりたい、より勝ちたいと強く思った。父にも工夫してもらいました」。カイロプラクティクの心得がある父・勝美さん(53)の連日の治療、テーピング。「回復は70%。きょうは足が使えなくなっても、畳の上に立ち続けようと思った」

◆谷亮子の今大会成績◆
回戦相手(国籍)内容
2回戦カラヤノプルー(ギリシャ)○合わせ技
3回戦ハッダ(アルジェリア)○大外刈り
準決勝ドゥミトル(ルーマニア)○合わせ技
決勝ジョシネ(フランス)○優勢
 そして、初戦から準決勝まで一本勝ち。昨年9月の大阪世界選手権の決勝と同じ顔合わせとなったジョシネ(フランス)との決勝も最後まで攻めた。開始9秒で小内刈りで効果を奪い、残り16秒で再び小内刈りで技あり。最大のライバルに完勝だ。

 昨年12月に結婚。長嶋ジャパンのメンバーに選ばれた夫も、チームメートとともに応援に訪れてくれた。15日に初戦を控える夫の「亮子!」の絶叫に心が熱くなった。

 その夫とは別居生活が続いている。兵庫・西宮市に構えた新居に帰るのは数えるほど。練習の拠点は実家のある福岡市に置き、コミュニケーションはもっぱら電話とメール。たまに会っても手料理で夫を癒せない。けがをする恐れがある包丁はNGなのだ。「料理はアテネの後に勉強して、主人を励ましたい」。心の中で手を合わせていた。「これからは夫の応援を力いっぱいします」

 08年北京五輪については明言を避けた。しかし、心は決まっている。すでにアテネ後の子づくりを宣言していた夫を「次の世界選手権(05年カイロ)、五輪(北京)もある」とたしなめているのだ。ゴールはまだ先。これからも、YAWARAはYAWARAであり続ける。

臼杵孝志


★夫・佳知も目に涙、今度は自分が金だ

谷佳知 重圧から解放された笑顔がまぶしかった。夫・谷佳知(31)は、妻・亮子を見つめるまなざしは優しく温かかった。悲願だった五輪連覇を成し遂げ、凱旋してきた妻をスタンドから身を乗り出して迎えた時には自然と目が潤んでいた。

 「最高の金メダルです。本人にはおめでとうと言いました。状態は100%ではなく80%。それが心配でしたが、彼女が持っているものをすべてアテネで出せた」

 昨年12月に挙式したが、妻は従来通り福岡を練習の拠点したため、別居生活が続いた。兵庫・西宮市内の自宅にはシドニーで金メダルを獲得した時の畳が敷かれている。その上で黙々と素振りを繰り返す。離れていてもお互いの心は通じ合っていた。妻が左足首を負傷した際は「スポーツ選手がけがするのは当たり前」と励ました。

 喜んでばかりはいられない。「夫婦で金」は妻との約束だ。夫は長嶋ジャパンの主力選手で、野球は優勝が至上命令。「次は自分の番」と心得ている。夫婦での金メダル獲得が実現すれば、日本では史上初の快挙。また、五輪史に『谷』の名が刻まれる。

 「刺激になりました。(決勝まで)9試合全部勝つつもりで頑張りです。しっかりとしたプレーでチームに貢献したい」

 プレッシャーを力に変えた妻の姿に勇気づけられた夫は、15日のイタリア戦からの全力投球を誓った。今度は夫が妻との約束を守り、感動をプレゼントする番だ。

写真:谷の夫・佳知は、夫人の金メダルを感無量の表情で祝福した=撮影・塩浦孝明

★夫婦で金メダル★

 52年ヘルシンキ五輪でチェコスロバキアのザトペック夫妻が夫婦同時金メダル獲得の快挙を成し遂げた。“人間機関車”の異名をとった夫のエミールは陸上の5000メートル、1万メートル、マラソンで優勝。妻のダナはやり投げで金メダルを獲得した。日本では64年東京五輪の体操で夫の小野喬が男子団体で金メダル、妻の清子(現国家公安委員長)が女子団体で銅メダルを獲得しているが、夫婦で金メダル獲得の例はない。

 ◆野球日本代表・中畑ヘッドコーチ 「2つ(谷、野村の金メダル)もすごいのを見られた。観戦に来た(野球の)選手も何かを感じるだろう。これはつながるよ、絶対に」

★国民栄誉賞もあるぞ

 日本女子選手として初めて五輪連覇を成し遂げた谷に、永田町では早くも「国民栄誉賞」の声が挙がっている。00年シドニー五輪で金メダル獲得後に、内閣総理大臣顕彰を贈られた。同大会のマラソン女子で優勝した高橋尚子が国民栄誉賞を受賞しており、五輪連覇を達成した谷の偉業はQちゃんを上回る、との声もある。実現すれば、柔道界からは84年ロサンゼルス五輪金メダリストの山下泰裕以来の快挙となる。

★最強神話どこまで、4年後北京も狙う!

 日本人女子選手として初の五輪連覇を達成した谷亮子は、すでに4年後の北京五輪を見据えている。28歳のミセス選手。周囲から勇退をすすめる声も挙がっているが、柔道を愛するYAWARAにとって「引退」の2文字はまだ先のことだ。

 シドニーで優勝した時の表彰台で、アテネの金獲得を誓った谷。北京では、女子選手として世界最多タイとなる五輪3連覇、日本人として史上最多となる5大会連続メダルを目指す。

 次の目標は、来年開催される世界選手権(エジプト)となる。谷は世界柔道6連覇中で、それをクリアすれば、07年のブラジル大会も当然視野に。仮に連覇することになれば、記録は「8」まで伸びる。最強神話はどこまで続くのか−。

★そのとき★

 谷の快挙を神奈川・横須賀市内のホテルで見ていた恩師の帝京大女子柔道部の稲田明監督は、教え子の金メダル獲得を心から喜んだ。「『田村で金、谷で金』という約束どおりだもんな。よく頑張った」。出発前に谷から「けがは心配しないで下さい。金メダルを獲って帰ってきます」と連絡があったという。稲田監督は「亮子なら大丈夫。信じている」と落ち着いて見守っていた。

★吉田秀彦★

 おめでとう、よくやった! 谷に贈る言葉は、それ以外にない。左足首のアクシデントを乗り越えた精神力の勝利だ。

 戦前、僕も「あれくらい練習できれば大丈夫。経験も積んでいるし、谷なら戦い方はわかっているはず」とエールを送ったが、五輪という世界最高の舞台で最後まで勝ち上がるのは、実力、経験に加えて運もなければ無理。この日の谷には、すべてがそろっていた。

 最後まで攻め続ける柔道で。日本の女子では初の2大会連続の金。これまでの谷の実績にふさわしい快挙だった。

 そして、谷に勝るとも劣らない大記録を打ち立ててくれたのが野村。夏季五輪史上で21人目、柔道では初の3連覇は、まさに金字塔。歴史的な勝利に、僕も体が震えた。アベックメダルで、続く選手には重圧がかかるはず。でも、重圧をはね返した2人に負けない勢いで勝ち進んでほしい。

92年バルセロナ五輪金メダリスト


 ◆竹田恒和・日本選手団団長 「谷選手の2連覇、野村選手の3連覇を心からお祝いする。これで日本選手団も勢いを得たと思う。金メダル第1号、(通算)100個目の金メダルと、日本にとって記念すべきメダルの獲得は大変うれしい

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