【第85号】小林孝至−小さな男がでっかい仕事
(88年ソウル・レスリング・フリースタイル48キロ級)
★金メダルなくしちゃった…
身長1メートル58。最軽量のクラスでもひときわ小さい25歳の小林が大仕事をやってのけた。決勝戦、身長で10センチも高いツォノフ(ブルガリア)を圧倒し、残り10秒で組み伏せると、会場からは「9、8、7…」とカウントダウン。小林は、終了のブザーと同時に、「ワー」と叫んで右手を突き上げ、ガッツポーズ。全身で喜びを表した。
茨城・土浦日大高時代にレスリングを始め、2、3年時に高校3冠を達成。小さな体に似合わない怪力と破壊力抜群のタックルで期待されたが、気分がのらないと平気で手を抜く性格が災いして大成が遅れた。
転機となったのは、4年前のロサンゼルス五輪選考会。高校の先輩、入江隆との死闘で14−15の僅差負け。小林は涙を流して抗議し、ショックで水戸の実家にも3カ月ももどらなかった。
この五輪の選考会も、入江との死闘となり、今度は延長の末に勝って代表権獲得。「負けたらレスリングをやめる」という覚悟が本来の力を引き出した。
憎めない性格が再び表面に出たのは五輪後。上野駅の公衆電話でバッグを置き忘れ、金メダルを紛失。幸いすぐに発見され、お騒がせでも主役になった。
〔写真:1988年ソウル大会レスリング、フリースタイル48キロ級で優勝した小林孝至〕
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