【第84号】鈴木大地−日本中が「バサロ」に沸いた
(88年ソウル・競泳・男子100メートル背泳ぎ)
★決勝での大バクチが大当たり
ダイチの快挙に日本中がわいた。12年ぶりに東西両陣営がそろった真のオリンピック。21歳の鈴木がもたらした日本最初の金は、競泳にとっても16年ぶりの金メダル。バサロ泳法は流行語となり、「大地」と命名される子供も急増した。
バサロは、スタート直後から潜水状態でドルフィンキックをあおむけで使う泳法。鈴木は14歳からこの泳法に世界への道を見いだした。ライバルもこぞって取り入れ、予選では、ライバルの1人バーコフ(米国)は33メートルも使うことで、54秒51の世界新を出していた。
55秒90の日本新、全体で3番目のタイムで決勝に進んだ鈴木と、同姓の鈴木陽二コーチは本番で大バクチをうつことに踏みきった。「銅メダルなんかいらない。金がほしい」。
通常25メートル行うバサロの距離を30メートルに伸ばした。これが見事にはまる。ラスト10メートル、横一線の戦いで鈴木の腕がぐいと伸び、55秒05の日本新で金メダルを勝ち取った。
大会の2年前、バサロ練習のし過ぎで激しい腰痛に見舞われ再起不能とまで言われた。泳げない苦しみから泳ぐ喜びを知ってつかみとった大輪。表彰式でメダルを授与したのは、32年ロサンゼルス五輪の同じ種目で優勝した清川正二IOC委員だった。
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