【第43号】上武洋次郎−左肩脱きゅう、奇跡の連覇

(68年メキシコ・レスリング・フリースタイル・バンタム級=57キロ以下)

上武洋次郎★ライバル相次ぐ失格、ギプスで表彰台へ

 東京の覇者、上武が、痛みに耐え、ど根性で奇跡の連覇を果たした。

 大会前は最有力候補にもあげられた25歳の上武だが、3回戦で得意の飛行機投げにいった際、左肩を痛めてしまう。その影響で、4回戦は最大のライバル、アリエフ(ソ連)と引き分け。そして、アクシデントは最終日の7回戦で起こった。

 アブタレブ(イラン)に序盤0−3とリードを許した2分40秒過ぎ。もつれて倒れた上武が左肩を押さえて顔をゆがめた。左肩脱きゅう。ドクターは一度は中止のサインを出したが、上武は入れた肩をぐるぐる回してOKをPR。右手一本でポイントを奪い返し、引き分けで試合終了。上武はそのままマットに崩れ落ちた。左肩は再び脱きゅうしていた。

 上武に幸運の女神がほほえんだのは、医務室でどす黒く腫れた肩の治療を受けていたとき。アブタレブ、アリエフ、ベーム(米国)が相次いで失格。戦わずして上武の連覇が決まった。

 「腕の一本なくてもどこまでもいってやる、と思っていた。もうレスリングはできないと思う」という上武は左肩をギプスで固めて表彰台へ。大会後、燃えつきたように引退を表明した。


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