【第33号】遠藤幸雄−あん馬で2度の尻もちも逃げ切り

(64年東京・体操・男子個人総合)

遠藤幸雄★苦労人に天も報いる

 10月20日に行われた団体自由演技。団体連覇濃厚となった日本チーム最後の種目、あん馬で、7000人の観衆の目は、遠藤の一挙一動だけに注がれていた。

 当時は、団体総合の成績に基づいて個人総合成績も決定される方式。遠藤は5種目終了の時点で、2位のシャハリン(ソ連)を0・95点もリード。9点台の得点を出しさえすれば、日本にとって、史上初の個人総合タイトルが決まる。

 ところが、遠藤は、旋回から交差に入ろうとして尻もち。会場から悲鳴が飛ぶ。足交差に入って再び尻もち。どうにか演技を終えたとき、顔はそう白を通り越して土毛色になっていた。

 15分に及ぶ異例の協議の末に出された得点は「9・10」。ソ連側が猛抗議するなか遠藤の金が決まった瞬間だった。

 小学校の時、母親が病死。父親は事業で失敗し、地元秋田市の児童養護施設で中学から高校まで過ごす中、体操と出会った。郷里の先輩、小野喬の母校・東京教育大に進学後も、奨学金とアルバイトで生活しながら技を磨いた苦労に、天が報いたような金だった。


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