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【第9号】西竹一−人馬一体「バロン・ニシ」10万人魅了
(32年ロサンゼルス・馬術・大障碍競技)
満州事変を受け、反日感情が高まる中行われた大会の最終日。1人の日本人が10万人の大観衆を魅了した。
男爵・西竹一陸軍中尉、30歳。
当時の馬術・大障碍は、閉会式の直前に行われる大会の華。五輪史上最も難しいコースで、11人中10番目に登場した西は、欧州で自ら購入した愛馬ウラヌス号とまさに人馬一体。減点8の優美な飛越で、米国のチェンバレン少佐(減点12)を抜き、優勝。会場はスタンディングオベーションの嵐がおこり、「バロン(男爵)・ニシ!」のコールがこだました。
父は元外相の名門に生まれ、語学も堪能。社交性に富む西は、米国の日本人に対するイメージを一変させたといわれる。
悲劇が訪れたのは、それから13年後の昭和20年2月。西は戦車連隊長として赴任していた硫黄島で玉砕。包囲した米軍将校は、「バロン・ニシ、われわれはロサンゼルスのあなたを覚えている」と降伏を呼びかけたが、姿をみせることはなかった。最後までウラヌス号のたてがみを身につけていたという。その愛馬は、ほぼ同じころ、日本で、主人の後を追うように息をひきとった。
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