鹿島、あん馬で体操ニッポンの悲願を叶える

鹿島丈博 鹿島が体操ニッポンの悲願を叶える。これまで五輪で金27銀28銅30ものメダルを獲得している体操日本男子が唯一金メダルを獲っていないのが種目別のあん馬だ。昨年8月のアナハイム世界選手権の種目別あん馬で日本選手初の優勝を果たしたスペシャリスト。長い手足が生み出す華麗な技でアテネでも頂点を狙う。〔写真:これが“世界の鹿島”のあん馬の演技。日本初の金に手が届くか−

★体の半分以上が足

 美脚こそが最大の武器。鹿島のあん馬の演技は、シロートでも違いがわかる。長い足を大きく開いて回る「旋回」。あん馬の見せ所が大きくて速く、きれいに映える。「美しく、力強く、が目標。見ててすごいなというのがないと、五輪では勝てないと思う」

 あん馬には理想的な体形だ。体操選手では長身の1メートル69と長い足。大腿骨の最上部からの長さは86センチで、体の半分以上が足なのだ。足に比例して胴が短く、手の長さが64センチある分、あん馬に手をつくと鹿島の腰の位置は高く、ポメル(把手)にお尻をぶつける危険もない。肩幅が40センチと体操選手にしては狭いのも有利。2つのポメル間の幅は40〜45センチなので、肩幅の広い選手には窮屈だが、鹿島はポメルを握っても回転しやすい。「体形からあん馬が得意になり、優勝して自信がつき、あん馬にプライドを持つという相乗効果でここまできた」

 鹿島を指導する加納実・順大教授が指摘する。五輪で27個の金メダルを獲った日本体操陣もあん馬だけ金がない。欧米の選手に比べて胴長で手足の短い日本選手にとって、あん馬は大きな壁。それを軽々と越えたのが鹿島だ。中3で95年全日本選手権の種目別あん馬を制し、男子最年少V。昨年8月の世界選手権で鉄棒との2冠に輝き、日本に初のあん馬金メダルをもたらした。「6種目の中でやってて楽しいのはあん馬。五輪でも大きな旋回をしていきたいです」

 5月下旬、日本体操協会がアテネ本番で使用されるオランダ・ヤンセン社製の器具をリースし、東京の国立スポーツ科学センター内に搬入。アテネ対策も十分だ。体操ニッポン復活の一翼を担う鹿島。次は五輪であん馬の金を獲る番だ。

牧慈

★あん馬

 体操の中で最も歴史がある種目で、乗馬術から生まれた。馬に見立てた革張りの台の上で演技する。台の高さは1メートル05。演技は静止することなく、2つの把手(ポメル)やあん馬全体を使って振動や旋回技を中心に構成し、片足の運動・片足や両足の旋回・交差などを入れる。アテネ五輪でのライバルは、シドニー五輪金のマリウス・ウルジカ(ルーマニア)、旋回の定評のある肖欽、世界選手権で鹿島と優勝を分け合った騰海浜(ともに中国)だ。

★ルール

 体操は男子は6種目(ゆか、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒)、女子は4種目(跳馬、段違い平行棒、平均台、ゆか)。男女とも種目別の他、全種目の合計点で競う個人総合と、各種目3人の合計点で競う団体総合がある。新体操は五輪は女子のみ。個人と団体(5人制)があり、手具によってロープ、フープ、ボール、クラブ、リボンの5種目がある。トランポリンは五輪は個人のみ。118本のスプリングで懸架した面の上で演技する。各種目とも技の難度と審判の採点で得点をつける

★五輪日本史

 体操男子は小野喬が56年メルボルン大会の鉄棒で金メダルを獲ったのを皮切りに、60年ローマ大会から団体5連覇を達成し、黄金期を築いた。加藤沢男は68年メキシコ、72年ミュンヘンでの個人総合2連覇など日本最多の金メダル8個を獲得。塚原光男は鉄棒の月面宙返りのなど新技を編み出した。これまで金27銀28銅30のメダルを獲得。女子は64年東京大会で団体銅メダル。84年ロス大会からの新体操、00年シドニー大会からのトランポリンではまだメダリストはいない。

★世界の勢力

 体操は、団体は王者・中国を米国、日本、ルーマニア、ロシアが追う展開。個人総合はポール・ハム(米国)、楊威(中国)の優勝争いに日本の米田、冨田が挑む。種目別は激戦が必至。李小鵬(中国)の平行棒と跳馬、ヨルダン・ヨブチェフ(ブルガリア)のゆかとつり輪も脅威。日本は鹿島のあん馬と鉄棒、塚原と冨田の平行棒などが優勝候補。女子は東欧、米国、カナダなどが強い。新体操は世界女王アリナ・カバエバらロシアの他、東欧、旧ソ連勢が上位。トランポリンはロシア、ドイツ勢が世界をリード。

 
◆体操ニッポン・五輪での種目別最高成績◆
 















大会                
32 ロサンゼルス   18       12
36 ベルリン 43 30 31 35 42 24 33
40 中 止                
44 中 止                
48 ロンドン                
52 ヘルシンキ 12 31 10 17
56 メルボルン
60 ローマ
64 東 京
68 メキシコ
72 ミュンヘン
76 モントリオール
80 モスクワ                
84 ロサンゼルス
88 ソウル      
92 バルセロナ 13
96 アトランタ 10 12          
00 シドニー 12        
◆メダル合計◆
27
28
30
【注】床運動は東京五輪からの種目名。それ以前は
従手。大会名の数字は順位。メダル合計の数字は個数


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