バケツ仕込みの銅、あん馬の鹿島「世界一の美脚」

 体操は22日に種目別決勝の男子3、女子2種目を行い、男子はあん馬で昨年の世界選手権優勝の鹿島丈博(24)=セントラルスポーツ=が銅メダルを獲得した。日本勢のこの種目でのメダルは7大会28年ぶり。冨田洋之(23)=同=は8位。滕海浜(19)=中国=が優勝した。つり輪では、冨田は4位に入り、地元ギリシャのディモステニス・タンパコス(27)が優勝。床運動の中野大輔(21)=九州共立大=は6位、米田功(27)=徳洲会=は7位。カイル・シューフェルト(22)がカナダ勢として初の金メダルを獲得した。



 世界王者として臨んだ種目別のあん馬で、手にしたのは銅メダル。悔しさは残るものの、鹿島は笑みを浮かべ、初の五輪での最後の演技を振り返った。

 「オリンピックという大きな舞台で、気持ちのいい演技ができたのが、自分ではよかったと思います」

 日本選手が苦手とするこの種目でのメダルは、76年モントリオール五輪で銀メダルを獲得した監物永三以来、28年ぶり。昨年の世界選手権(米アナハイム)での金メダルを“防衛”することはできなかっただけに「表彰台ではちょっと悔しいというのはありました」。複雑な気持ちながら、団体金に続く、2つ目のメダル獲得に大きくうなずいた。

 体操選手としては大柄な身長1メートル69、また下84センチ。つま先までピンと伸びた“美脚”をダイナミックに旋回させた。華麗な演技の原点は手作りの器具とユニークな発想に支えられたバケツ練習だった。大阪市内の自宅から歩いて3分の名門「マック体操クラブ」に、3歳から兄と通った。

 力技が苦手で「走るのが嫌いだった」という鹿島は、あん馬に飛び付いた。クルクルと面白いように旋回できた。天井からロープでぶら下げた空のバケツを横に傾け、両足先をその中に入れて旋回する練習を繰り返し、一日に300回以上も回っていた。

 中学3年で最年少のあん馬日本一に。家族に「五輪でメダルを取りたい」と口にした。「天才少年」といわれてから9年。まずはアテネで金と銅の輝くメダルを獲得した。「次も挑戦したい」。心は早くも4年後の北京五輪へ。団体、そして個人でも世界の頂点に立つ。

 鹿島 丈博(かしま・たけひろ) 1980(昭和55)年7月16日、大阪府生まれ、24歳。セントラルスポーツ所属。清風高から順大。3歳から体操を始め、大阪昭和中3年の95年、全日本選手権の種目別あん馬で男子史上最年少優勝を果たす。02年の世界選手権・デブレツェン大会であん馬3位。03年の世界選手権・アナハイム大会では、あん馬と鉄棒で金メダル獲得。1メートル69、61キロ。


★そのとき★

 日本時間23日未明に行われた体操男子種目別のあん馬で3位に入った鹿島の地元・大阪は団体金に続くメダルに沸いた。鹿島が中学校時代まで通った大阪市阿倍野区のマック体操クラブでは、約140人がテレビ観戦。銅メダル獲得が決まると、「よっしゃー」と大歓声が上がり、万歳を繰り返した。自宅で試合を見ていたという母校の清風高校(大阪市天王寺区)の平岡英信校長は「世界体操選手権で金を取っていたので、またメダルが取れるのではと期待していた」と声が弾んだ。

★中野は着地ずれて床6位

 中野は最後の着地で、わずかに動いた。メダルを目指した床運動は6位。「世界は着地。みんな(演技価値点が)10点満点で着地勝負にきている。1位から8位まで、ちょっとの差。世界では着地の大事さを感じた」。痛めていた右足首を悔やむように話した。最終日の23日は予選1位通過の平行棒で再度メダルに挑む。「(スーパーE難度の)ムーンサルトはやる。練習も着地で止まっている」と自信を見せた。

★池谷幸雄★

 鹿島クンがあん馬で、銅メダル。自分の実力は全部、出し切っていたと思います。金メダルには届きませんでしたが、ミスのない完ぺきな演技でした。優勝した中国の滕選手の方が、運を持っていたということ。種目別ではとくに、演技順が採点に影響します。大技を決めれば高得点が出やすい最終演技者で、縢選手が、あれほどのすばらしい演技を決めれば、仕方がないですよ。

 冨田クンのつり輪も、4位に終わりましたが、思い切った演技をしていました。銅に輝いたイタリアのケキ選手はボクより1つ年上の35歳。現役時代には、一緒に戦っていた選手です。体操選手は普通は30歳手前から衰えるのですが、天性の才能を持っているのでしょう。ベテランとして名前があるし、審判へのアピールもうまかったですね。

 あん馬とつり輪はここ数年、日本が苦手だった種目。団体の金と同じくらい、この好成績の意味は大きいです。92年バルセロナ五輪の床で銀メダルを獲ったボクたちの試合を見て五輪を目指した世代が、12年後のアテネで成果を出してくれました。この活躍をきっかけに、また体操人口が増えればいいですね。

五輪メダリスト


★床でシューフェルト金、カナダ初のメダル

 切れのいいシリーズ技を見せたシューフェルトが、男子床運動でカナダに男女を通じて初のメダルをもたらした。「五輪でのメダルは6歳で体操を始めたときからの夢だった。それがいきなり金メダルだなんて。うそみたいだ」と興奮しながら話した。下り技をぴたりと決め、女子段違い平行棒を制したルパンネもフランスの女子としては初のメダル。「演技を終えたときは、表彰台はいけると思った。それが金メダルになって最高の気分」と、こちらも笑顔いっぱいだった。

★ホルキナまさかの落下で3大会連続メダルならず

 女子段違い平行棒で五輪3連覇の偉業に挑んだホルキナ(ロシア)だったが、まさかの落下。得点は8・925点と、決勝に進んだ8人の最下位に終わった。体操の種目別で五輪3大会連続メダルは、56年メルボルン大会から床で3連覇したラチニナ(旧ソ連)だけ。40年ぶりの快挙達成はならなかった。「これからは、英語の勉強など体操以外のものにチャレンジしたい」。25歳の“ベテラン”は事実上の引退宣言で締めくくった。


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