山本昌邦監督、断腸の思いでFW高原直泰を外す

山本昌邦監督 最後まで愛弟子にこだわった。16日午後2時から五輪サッカー男子代表18人を発表した山本昌邦監督(46)は、肺動脈血栓塞栓症再発の危険性から招集回避を勧告されたFW高原直泰(25)=ハンブルガーSV=に関して、発表直前に日本協会の川淵三郎キャプテン(67)に直談判したことを明らかにした。しかし、結果は覆らず、会見では涙をこらえながら高原の復活を期すエールを送った。〔写真:五輪メンバーを発表する山本監督。“高原外し”の辛い胸の内を吐露した=撮影・荒木孝雄

アテネ五輪男子サッカー代表メンバー

★「ウルトラC」も提案

 断腸の思いが、山本監督の脳裏を駆け巡る。自ら読み上げた18人の五輪代表の中に、磐田時代から師弟の間柄だった高原の名前はない。非情の現実。代表監督の表情を保とうとするほど、その涙腺は決壊しかけた。「残念ですが、ブンデスリーガで大爆発してW杯予選に戻ってほしい。言いたいことはたくさんありますが、今はその時期じゃない。これ以上、(高原に関する)コメントは差し控えます」

 日本協会のスポーツ医学委員会の決定は覆らないことを承知の上で、この日の午前中に川淵キャプテンを訪ね、高原をバックアップに加えるか、18人の正式メンバーに入れて開幕直前まで様子を見る「ウルトラC」も提案した。しかし、36年ぶりのメダル獲りを目指すチーム全体を考えると実行には移せなかった。

 先の石垣島合宿で、就寝時間のはずの夜明け前に海辺を走る高原の姿を見た。アテネへの燃える思いに胸を打たれた。だからこそ、時間切れ直前まで可能性を探った。

 「アテネ経由でドイツに行く選手もいれば、しないで行く選手もいる。このチームで競争してきた価値を、ドイツのピッチにつなげてほしい」。アテネ五輪へ掲げたテーマには、高原への復活エールでもあった。

藤江直人

★「僕個人なら高原を呼ぶ」

 日本協会の川淵キャプテンも「僕が決断するでのあれば文句なしに出ろと言う」と高原招集断念に苦渋の表情を浮かべた。高原の両親がすでにアテネ観戦の準備をしていたことも報告されていて、「辛いことだけど、高原のメンタルをケアしないといけない」。この日は技術委員会の野見山副委員長を事情説明のために静岡県内の高原の実家に派遣した。

 ◆日本協会・田嶋幸三技術委員長 「高原は何とかしてやりたかった。今後は協会として、しっかりとケアしていくことが大事になる。高原には意地でもブンデスリーガで活躍してほしい」

★高原は

 FW高原は「出られないのだから、後から何を言っても変わることはない。それより、山本さんに申し訳ない。それが一番大きいですね」と、五輪欠場への無念さ以上に、山本監督への思いが口をついた。この日は、HSVの練習場付近の森でトレーナーとともに約50分ランニング。8月7日の開幕戦バイエルン戦は「間に合うかは微妙」だが、来週にも医師の検査を受け、早期合流を目指す。

ハンブルク=円賀貴子通信員

★主将は小野

 MF小野(フェイエノールト)が主将に指名されることが確実。「いくつか選択肢があるが、これから合流する選手もいるから」と、山本監督は8月2日にドイツで加わる小野を、中盤だけでなく、チームの中心に据える構想を披露。左ひざじん帯断裂の後遺症でシドニー五輪を棒に振った24歳は、「その悔しさをアテネで何倍もの喜びに変えたい」と早くも武者震いしていた。

★落選組

 代表候補4人を抱えた浦和勢からはMF鈴木啓太、山瀬功治が落選。U−23代表で主将を務めてきた鈴木は「悔しい。でも、これが自分の現実」とうつむき、山瀬は「力が足りなかったとしかいいようがない」と声を振り絞った。ほかに、浩司との双子代表を目指したMF森崎和幸(広島)や根本裕一(大分)、田中隼磨(横浜M)、GK川島永(名古屋)、岩丸史也(神戸)らも落選した。

★山本監督に聞く

 −−選考の基準は

 「世界基準で、2年後のドイツ(W杯)のピッチにつながる基準の中で選びました。36年の時を超えるための最強メンバーがこの18人です」

 −−アジア予選で主将を務めたMF鈴木(浦和)が外れましたが

 「18人を上から選んだ結果ですが、その中でユーティリティーというのは貴重な戦力。差はほとんどないが、ユーティリティーに欠けた部分はマイナスになりました」

 −−軸となる選手は誰になるのでしょうか

 「小野はシドニーの悔しさもあるし、高原の分も含めてやってくれると期待している。ただ、試合が終われば中心となった選手は出てくるでしょうが、一人に頼るチーム作りはしていない」

 −−改めてアテネの目標を挙げると

 「立ち上げの時から、先輩を追い抜くには表彰台に上らないと、と言ってきた。そうなると最大で6試合戦えるし、そこで急に伸びる選手が出ることに期待したい」


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