ターボ大久保2発、さあU−23「シドニー超え」だ

大久保嘉人 勝った、アテネ切符をつかんだ! アテネ五輪アジア最終予選B組最終日(18日、国立ほか)。U−23日本代表はUAEとの最終決戦に3−0爆勝。18日間におよぶ苦闘のラストを飾り、3大会連続7度目の五輪出場を決めた。FW大久保嘉人(21)=C大阪=は前半42分、後半2分にゴールを決めるなど小雨降る国立のピッチで大暴れ。『谷間の世代』は96年アトランタ組、00年シドニー組を超えるべく、今年8月に五輪発祥の地で世界に挑む。〔写真右:FW大久保がまた決めた! 前半42分に2戦連続ゴール。後半2分にも“五輪弾”をたたき込んだ。同下:日の丸イレブンはスタンドに向かって万歳。大久保=左=が、みんなが頼もしくみえた。もう『谷間の世代』とは呼ばせない=撮影・小倉元司

U−23UAEvsU−23日本詳細へ
アテネ五輪アジア最終予選へ

 ▼国立
日  本
4勝1分1敗
勝ち点13
2−0
1−0
UAE
2勝1分3敗
勝ち点7
【得点者】▼日=那須、大久保2

 5万4000大観衆をのみ込んだ国立に、凱旋行進曲の大合唱がこだまする。『谷間』といわれた世代が、まばゆいばかりに光り輝いた。絶対にアテネへ−。日本サッカーの意地を、進化を聖地・国立で証明した。

 「本当にうれしい。日本ラウンドしかやっていないけど、すごく厳しかったんで」

大久保=左=ら 気温6度。冬に逆戻りしたような冷え込みの中、日本列島に勇気をもたらしたのは大久保だ。UAEのゴールネットが揺れるたび、寒さは熱気へと変わり、厚い雲の立ち込める夜空に舞い上がった。

 日本ラウンドから合流した救世主が、最終決戦でも頼もしい。DF那須の先制点で主導権を握った前半41分、DF阿部の左CKからのボールを左足がとらえた。さらに後半2分、FKのクリアボールを右足ボレーで合わす。シュートはバーをたたいたが、自ら詰めてダメ押しの3点目を日本サポーターの祈りに刻み込んだ。

 『谷間の世代』。97年のU−17世界選手権(エジプト)のアジア予選で敗れたときからこう呼ばれ始めた。日本協会・平田専務理事は「この世代の強化の徹底を申し出たとき、Jリーグから半信半疑の声があった」と明かす。

 なにしろ、小野、稲本、高原らを擁した前の世代が偉大すぎた。99年世界ユース選手権(ナイジェリア)準優勝。00年シドニー五輪予選でも、快進撃を続けた。アジア予選を12戦無敗で五輪出場権を獲得。壮行試合を含め、実に17連勝で本大会に進んだ。

 オレたちは『黄金世代』に追いつくことはできないのか…。主将のMF鈴木は「勝ち続ければ谷間なんて言われないですから。気にしてません」と言いながらも、それぞれが屈辱をかみしめた。

 大久保もそうだ。UAEラウンドのメンバーからは漏れた。山本監督は「入れ替え」で選手に刺激を与え、そして緊張感を求めた。

 「もし、UAEに行ってたら、こうなったのかは分からない。外されても投げやりにならずに自分を追い込めた。『悔しい』というのが大きかったんで」。山本監督が“ターボ”と例えた残り2試合の大爆発。エースが精神的にも大人になった証しだ。

 さあ、アテネへ。96年アトランタ組も、シドニー組だって超えてみせる。五輪発祥の地で『谷間の世代』が大暴れする。

(岡田薫士)

★ホットライン★

 東京・大手町サンケイスポーツ東京本社→福岡県・大久保嘉人の実家でテレビ観戦した父・克博さん

 −−大久保選手が2ゴールあげましたよ

 「まさか入ると思ってなかった。入ったときは娘といっしょに手をたたいて喜びました」

 −−試合前は連絡を?

 「昨日(17日)の夜に、とにかく気合を入れていけと励ましました」

 −−A代表では結果が出ていなくて心配だったのでは

 「心配はありましたね。でも、選ばれるだけでもうれしかった。ホッとしました」

 −−きょうは家族全員で

 「下の娘と一緒に見てました。お酒を飲みながら、きょうはお酒がおいしいですね」

 −−いつももらってる代表のユニホームは?

 「まだ、何も話してませんが、欲しいですね。今までずっともらってきたんでね。『19』も珍しいですし…」

★そのとき★

 五輪出場をかけた大舞台にFW大久保、平山、DF徳永と教え子が3人。スタンドから見守った国見高サッカー部・小嶺忠敏総監督は「感無量? みんなが頑張ってくれたからですよ」と笑顔が弾けた。8日のメンバー発表以降、大久保には2度に渡り電話を入れ、「内容は言えませんけど…」とマル秘のアドバイスを送った。試合後は川淵キャプテンとガッチリ握手を交わした。

★飲みには行きません…

 試合後、代表戦士はテレビ出演に追われた。2ゴールを決めたFW大久保は、山本監督とともにテレビ朝日の『ニュースステーション』、NHKの『ニュース10』をハシゴ。『Nステーション』では久米宏キャスターからの「これから飲みに行くの?」との質問にタジタジ。最終予選前の鹿嶋合宿中の“無断外出”が問題となったあとだけに「宿舎に戻ります…」と、苦笑いを浮かべていた。

★報奨金★

 アテネ切符を勝ち取ったU−23日本代表には、日本協会の規約に沿った報奨金が支払われる。出場権獲得で1人につき200万円、最終予選の1勝につき15万円、引き分けでその半分。6試合フル出場のGK林とMF今野は、計267万5000円を手にすることになる。

★川淵キャプテン「メダルの可能性も」

 日本サッカー協会の川淵三郎キャプテンも“谷間の世代”といわれたチームの五輪出場決定を手放しで喜んだ。「(山本監督から)“心配かけました”といわれたけど、文句のいいようがない」と選手、スタッフ全員を握手でたたえた。「メキシコ五輪以来のメダルの可能性もある」と期待を込めていた。

 ◆日本サッカー協会・平田竹男GS 「長い道のりだったが、きょうが出発点。集団下痢でも闘莉王の離脱でも勝ち抜ける強いチームができた。選手を出してくれたJリーグの各チームに感謝したい」

 ◆田嶋幸三・日本サッカー協会技術委員長 「本当に胃が痛かった。最後にいい形で決めてくれてよかった。追い込まれて、必ずしも体調がよくないなかでも勝てたのは、日本のサッカーが強くなった証拠」

★ギリシャにも速報

 日本がアテネ五輪サッカーの出場権を得たニュースはギリシャでも関心を持たれており、地元アテネ通信は18日、試合終了から30分足らずで、契約通信社電を転電する形で「日本がアテネへの切符を手にした」という見出しで速報した。同通信はすべての五輪出場についてニュースを流しているわけではなく、野球で米国が出場権を逃したときなど、重要とみられる結果だけ報道している。

共同

★主会場は建設遅れ

 アテネ五輪のサッカー男子決勝会場は、開閉会式や陸上競技と同じ五輪スタジアムで行われるが、建設遅れは深刻だ。スペインの建築家ラカトラバ氏がデザインするガラス製の屋根を取り付ける工事は、当初予定から2カ月遅れの4月18日から15日間実施される。工事責任者によると、工期の終了は五輪開幕まで約3週間しかない7月20日になる見通しだという。


著作権、リンク、個人情報について