加藤麻理子の申し立て、JSAAが全面棄却
馬術のアテネ五輪代表選考を巡って、落選した加藤麻理子(31)=ライジングクラブアルカディア=が日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に申し立てを行っていた問題は14日、JSAAが加藤側の申し立てを全面棄却した。五輪の代表選考に関するケースでは国内で初めてJSAAの仲裁に持ち込まれたが、選手側の“敗訴”となった。だが、日本馬術連盟にも改善するべき点を指摘。申し立て金の5万円と加藤側の負担金の一部50万円の支払いを勧告した。〔写真:裁定は「却下」。訴えが認められなかった加藤(右)の目から、涙がこぼれ落ちた=撮影・江角和弘〕
★連盟に対する不透明感ぬぐいきれず
伏し目がちな目から、涙がポロリとこぼれ落ちた。馬術障害飛越代表の決定取り消しと、自身選出の訴えは、いずれも棄却。“敗訴”の結論を受けた加藤は、それでもなお、連盟に対する不透明感をぬぐいきれなかった。「驚きを隠せない。不公正、不透明感を認めていながら、最終的には棄却された。自分自身の問題よりも、弱い立場にいる選手の存在意義を考慮していただきたかった…」
JSAAは、加藤側が主張した点を双方の答弁と証人喚問、提出書類をもとに審理。その結果、日本馬術連盟の五輪代表選考には著しく合理性を欠くものはない、と支持した。日本スポーツ仲裁機構・道垣内正人機構長は「馬術連盟の選考方法に問題はあるが、決定が覆ることはない」と、説明した。だが、連盟の選考基準にも透明性を欠く部分があったことや、選考過程で選手に馬を売却したコーチが強化責任者を補佐した点に公平性がない−などと指摘。訴訟の一部負担として計55万円の支払いを命じた。
★提出資料を報道陣に公開?
“密室選考”による代表決定以来、約1カ月に及んだ騒動。最終結論が出たことで、加藤側は一応の“終結”を宣言した。それでも、本来ならば露出しないはずの実名入りの提出資料を今後、報道陣に公開する最後の“抵抗”も浮上する。
加藤は「選手は全員、被害者だと思う。代表選手には私のぶんまで、アテネで頑張ってきてほしい」。言葉を詰まらせながら最後にはエールを送った。アテネ五輪まで1カ月。連盟の選考に不備を認めながらも、JSAAの全面却下には、後味の悪さも漂う。調整のラストスパートでムチが入るはずのこの時期に、ブレーキがかかった。
★加藤 麻理子(かとう・まりこ)
1972(昭和47)年7月25日、東京・文京区生まれ、31歳。ライディングクラブアルカディア所属。5歳で馬術を始め、85年に史上最年少で全日本障害ジュニア選手権を制覇。92年に東日本大会を3連覇、全日本大会で3位。同年からスイス、98年からドイツに拠点を移す。03年のアテネ五輪予選会で、団体優勝に貢献した。1メートル63、体重45キロ。
★日本馬術連盟・渡辺弘常務理事、複雑な表情
国内で初めて、関心度の高い五輪代表選考を扱ったJSAAの裁定を受けた日本馬術連盟・渡辺弘常務理事は会見を行い、「いろいろな制約があるなかで、最強の人馬を派遣できる。勧告は検討しなければいけない。(請求額について)コメントはありません」と複雑な表情だ。加藤側の申し立ては棄却されたが、同連盟には選考に対する勧告と、仲裁費用の負担として計55万円の支払いという“警告”が発せられたからだ。代表の林忠義の僚馬、スワンキー号が足に不安を抱えていることが発覚したが、同常務理事は「6月28日、9日、12日にも検査をしたが、いずれも問題はありません」と補欠の選出を否定した。15日には理事会が開かれ、北京五輪での選考方法についても話し合う方針。「もう、JSAAにお世話にならないようにしていかないと」としみじみ。
★経緯
◆6月15日 馬術のアテネ五輪代表が発表され、加藤麻理子が落選。日本馬術連盟の会見後に加藤の父・晴彦さんが“乱入”し、同・安岡理事長、東良監督と会談
◆22日 加藤側が日本スポーツ仲裁機構(JSAA)に申し立て
◆26日 日本馬術連盟の五輪代表壮行会が行われ、代表の4選手が顔を合わせる
◆7月8日 2度の答弁をへて、JSAAが審理を開始
| ■馬術騒動、両者の主張と裁定■ |
選
考
基
準 |
加藤 |
連盟側は04年の4月から6月までに数回の指定試合に出場しなければいけないと明記。だが、1試合しか出場していない選手が代表入入りした。また、指定された出場レース直前に変更した代表選手がいた |
| 連盟 |
数回の選考会出場だけでなく、1つの競技会で複数回走行すればいいと両方に解釈できるように作成した。出場レースは本部、または本部長が承認すれば変更できる |
| JSAA |
数回の出場競技会出場が必須条件という基準が確定したとは断定できず、複数の競技会に出場しなければ代表資格を欠くとはいえない。また、レースを変更した選手は、本部長の承認を得ているので問題ない |
利
害
関
係 |
加藤 |
JOCに登録されているコーチが、代表入りした2選手に馬を売却。同コーチは選考委員も兼ねており、利害関係があった |
| 連盟 |
コーチは選考委員会に出席しておらず、選手評価表も提出していない |
| JSAA |
コーチと選手の利害関係の有無に関係なく、加藤側の主張には理由がない |
実
績 |
加藤 |
日本が五輪出場権を得た予選会に出場しており、選考レースでも個人種目最高の6位に入っている |
| 連盟 |
数字上の判断ではなく、総合的な判断で選考。障害競技では予選会の出場選手と、代表選手は別。明記もしていない |
| JSAA |
成績を参考にしても、加藤を代表選手に選出すべきとはいえず、選考委員会が自ら定めた基準に違反していない |
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