長嶋ジャパン悲願の金メダルへ!五輪戦士にミスター魂注入

 (アテネ五輪壮行試合、日本代表1−1キューバ代表、1分け、東京ドーム)。キューバ代表を迎えた野球のアテネ五輪日本代表壮行試合『ENEOS ワールドチャレンジ』第1戦が13日行われ、五輪本番を目前に控えた選手に向けて、脳梗塞(こうそく)のリハビリに励む日本代表の長嶋茂雄監督(68)から長男・一茂さん(38)を通じて炎のメッセージが届けられた。これに応えるように長嶋ジャパンは1点を先制されながら、八回に高橋由伸外野手(29)=巨人=の二塁打で同点に追いつき、執念のドロー。再編問題に揺れる球界を救うためにも、長嶋ジャパンが悲願の金メダルへ第1歩を踏み出した。〔写真左下:長嶋監督の笑顔の広告を見つめる日の丸戦士。試合前に熱きメッセージが届けられた(撮影・春名中)。同右下:ジャパンのエース松坂はアマから参加のシダックス・野間口とリラックス(撮影・荒木孝雄)

長嶋監督の笑顔の広告を見つめる日の丸戦士 魂が、乗り移った。終盤の八回二死二塁。高橋由の小飛球に中堅のラミレスがダイビングキャッチを試みる。「落ちてくれ」−。選手の叫びはテレビの向こうにいる“あの人”と同じだ。次の瞬間、白球は緑の人工芝を転々とする。歓声のなかで二走の谷が同点のホームを駆け抜けていた。

 「チャンスを何度も潰していたから何とかしたかった。うれしかった」

 高橋由が二塁ベース上で力強く突き上げた右手のこぶし。笑顔の先に見えたのは、ミスターの微笑(ほほえ)みだったのかもしれない。

 金メダル最大のライバルとなるキューバに執念のドロー。日の丸戦士の心を揺さぶり、勇気を与えたのはやはり長嶋監督だった。コーチらスタッフと代表24選手はこの日正午過ぎに、都内のホテルに集合。ミスターの命を受けた長男・一茂さん(38)から伝えられた魂のメッセージに、静かに耳を傾けていた。

松坂とシダックス・野間口 『とにかく宮本キャプテンを中心に、去年の予選と同じ気持ち、同じ魂で(壮行戦)2試合を乗り切ってほしい。君たちは私の意志を継いだ伝道師だ−』

 都内のマンションでリハビリに励むミスターからの檄(ゲキ)は一茂さんの口から一語一句そのままに伝えられた。時間にして5分あまり。キューバとの戦いを前にした選手たちを、神聖な空気が包み込んだ。

 一茂さんによるとミスターには依然として右半身に軽いまひが見られるという。ただ、五輪指揮には強い意志を示し「そのために頑張っている。モチベーションを下げるとリハビリにも影響が出る。そこが難しいところ」と複雑な心境を吐露した。厳しい情勢に変わりはないが「まひや言語中枢機能などに改善が見られれば、違う見解が得られるかもしれない。ギリギリまで待って頂けると了承してもらった」と望みは捨てていない。

 ミスターは再編問題に揺れる球界の現状にも気を揉んでいるという。監督代行を務めた中畑ヘッドは「(一茂さんは)球界がこういう現状ですから、と言っていた。常に野球界のことを考えている人。今こそ『フォア・ザ・フラッグ』を思い出してほしいというメッセージだろう」。ミスターも激震の球界を憂えている。だからこそ金メダルで球界を再びひとつに−との思いが強いのだ。

 長嶋監督の言う『フォア・ザ・フラッグ』の精神は、そのまま代表選手にとっては『フォア・ザ・ミスター』。球界のため、ファンのため、そして病床で闘うミスターのために…。胸の日の丸を誇りに、五輪の大舞台に挑む。

 ◆試合後に発表されたテレビ観戦した日本代表・長嶋茂雄監督のコメント 「選手たちは国際試合の緊張感を体験できたと思う。アテネではこれが9試合も続くわけで、選手たちがきょうの体験をどう生かすかだと思う」

 ◆監督代行を務めた日本代表・中畑ヘッドコーチ 「選手は疲れもピーク。12三振はショックだったけど、ピッチャーがよく頑張ってくれた」

 ◆1失策の日本代表・宮本主将(ヤクルト) 「責任の重さを改めて感じた。失策は原因がわかっているので、次に生かしたい」

 ◆ふだんは遊撃ながら三塁で出場し失策した金子(日本ハム) 「サードは今朝、言われました。グラブはセカンド用でした。どこでもやれないといけないので、もっと練習します」

 ◆キューバを1点に抑えた日本代表・大野投手コーチ 「相手はストレートを打ってきた。インハイは詰まっていたね。変化球をいかにうまく使うかになる。きょうは城島がいいリードで引き出してくれた」

 ◆長嶋茂雄監督入院からの経緯>

 ★3月4日 自宅でめまいを訴え、都内の病院に緊急入院。

 ★同5日 「左大脳の中程度の脳梗塞(こうそく)」と発表

 ★同9日 初歩的なリハビリ開始。看護士に「おはよう」と声をかける

 ★同26日 本格的なリハビリ開始のため、都内の別の病院に転院

 ★4月12日 退院。別のリハビリ施設へ移り、言語、理学、作業のリハビリを開始

 ★5月10日 日本代表編成委員会・長船委員長がスタッフ会議で「(監督を)変えるつもりは毛頭ない。(アテネには)背負ってでもいくから」と明言

 ★同31日 スタッフ会議後、長船委員長が「長嶋クンは(日本代表の)ユニホームを着る練習をしている」と発言

 ★6月4日 一茂氏が会見。「私の気持ちは前回の会見と同じ。無理をしてほしくない」としながら「アテネに行くか、行かないかは本人が判断できる。ギリギリまで待ってあげたい」

 ★同25日 日本代表24選手を正式発表。ミスターは「聖地アテネの空に日の丸を掲げてくれると信じています」とのコメントを発表

 ★7月10日 キューバ代表との壮行試合の視察を見送ることが決定


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