ミスター笑顔の出迎え、銅ナインに「お疲れさま」
「本当にご苦労さん。お疲れさま」。アテネ五輪で銅メダルを獲得した野球日本代表が27日帰国し、脳梗塞(こうそく)で現地指揮を見送った長嶋茂雄監督(68)が、成田市内のホテルで待ち受け、ねぎらいの言葉をかけ、ひとりひとりと握手を交わした。3月4日に倒れて以来、ミスターが公の場に現れるのは初めて。目標の金メダルには届かなかった長嶋ジャパンだが、最高の笑顔で迎え入れた。〔写真右:銅メダルを手に戻ってきた中畑ヘッド=中央=以下、長嶋ジャパン。成田市内のホテルで長嶋監督と感激の対面を果たした=撮影・原田史郎。同下:代表を待ち受け、ねぎらった長嶋監督〕
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視界の中に長嶋ジャパンの“教え子たち”が入った瞬間、思わず立ち上がろうとしていた。成田市内のホテル10階のスイートルーム。中畑ヘッドコーチに止められ、いすにもう一度、座り直したが、表情にはあの明るい笑顔が浮かぶ。長嶋監督が精いっぱいの心を込めて、帰国した代表チームを迎え入れた。
「テレビで全試合、見ていました。よく頑張った。本当にご苦労さん。お疲れさまでした。ありがとう」
中畑ヘッド、宮本主将の報告を聞くと、選手ひとりひとりに、はっきりとした言葉をかけ、麻痺(まひ)の残る右手ではなく、左手で力を込めて握手を交わした。スーツ姿でめがねをかけ、少しほっそりしたものの、血色のいい肌や後ろになでつけた髪型は変わらない。ナインが持ち帰ったメダルは、夢描いた金ではなく、銅。スタッフや選手の胸の内は痛いほど分かる。それだけに何度も「よく頑張った」を繰り返し、2大会ぶりのメダルの重さを強調し、ねぎらった。
1試合ごとに長男・一茂氏にメッセージを代筆させて選手宿舎にファクスで送り、ともに戦い続けたアテネ五輪。その戦士たちの帰国を前に、いてもたってもいられなかった。脳梗塞で倒れてから176日、初めて他人の目の前に現れることを決意し、リハビリを続ける体にむち打ち、一茂氏とともに帰国会見の行われるホテルへ。“監督代行”の中畑ヘッドですら帰国して一茂氏から連絡を受けるまでは、監督がホテルで待ち受けていることは知らなかった。
わずか10分間の対面だったが、「明日から(のペナントレース)は大変だね」と伝えるのも忘れなかった。選手、コーチは部屋を離れると、口々に「よかった」。その後、主将の宮本が銅メダルを手に引き返してきた。苦闘の末の“勲章”に触れると、子供のように表情が輝いた。「少し興奮していらっしゃったのか、うれしそうな顔をしていただきました。ボクは精いっぱい戦いましたと伝えました」。宮本も感激を隠せなかった。
「あの笑顔を見られただけで、ホッとしています。最高のプレゼントですね。長嶋ジャパンとして取り組んだ五輪で、最高の野球を見せたと自負しています」
巨人時代から長嶋監督のもとで戦い続けた中畑コーチは、やっと肩の荷が下りた様子で、普段の笑顔を取り戻した。アテネの太陽のように、今も燦々と輝きを失わないミスター。夢に破れ、一度は凍りつき、再び暖かさを取り戻した長嶋ジャパンの思いが、4年後の北京五輪で再び金を目指す日本球界の原動力となっていく。
(佐久間賢治)
| 長嶋監督の闘病経緯 |
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| 3月4日 | 都内の自宅でめまいを訴え、緊急入院。検査の結果、「脳卒中の疑い」 | | 同5日 | 「左大脳の中程度の脳梗塞(こうそく)」と発表 | | 同26日 | 本格的なリハビリのため、東京女子医大病院から転院 | | 同31日 | 五輪日本代表1次登録リストに監督として登録 | | 7月13、14日 | キューバとの壮行試合視察を見送る | | 同20日 | 日本オリンピック委員会(JOC)が、アテネ五輪組織委員会に選手団リストを最終登録。正式に「長嶋監督」が決定 | | 8月2日 | 長男の一茂氏、中畑ヘッドが会見し、長嶋監督がアテネ五輪で現地指揮を執らないことを発表 | | 同4日 | 直筆による背番号「3」が入った日の丸をナインに贈る | | 同24日 | 準決勝で豪州に敗戦後、ファクスでメッセージ。「正直、とても悔しい」 | | 同25日 | 銅メダル獲得のナインにファクスでメッセージ。「本当にお疲れさまでした」 |
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| 長嶋ジャパン五輪成績 |
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| 1次リーグ | | ○ | 12−0 | イタリア | | ○ | 8−3 | オランダ | | ○ | 6−3 | キューバ | | ● | 4−9 | 豪州 | | ○ | 9−1 | カナダ | | ○ | 4−3 | 台湾 | | ○ | 6−1 | ギリシャ | | 準決勝 | | ● | 0−1 | 豪州 | | 3位決定戦 | | ○ | 11−2 | カナダ |
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★主将の宮本「全力で戦った」
主将を務めた宮本(ヤクルト)は「1つのプレーも気を抜くことなく、選手、コーチ、スタッフが全力で戦いました」と強調した。再編問題で揺れる日本球界に戻り、28日からは再びペナントレース。「シーズンに帰っても責任を持って、野球界を引っ張っていきたい」と力を込めた。
★松坂は「銅メダルを誇りに」
2度目の五輪出場だった松坂(西武)は、前回大会の4位を上回り「シドニーの屈辱は果たせました。銅メダルを誇りに、これからの自分に生かしていきたい」と笑顔を見せた。空港には父・諭さん、母・由美子さんが出迎え。「北京に出られれば金メダルを獲って欲しい」と由美子さんは願ったが、当の本人は4年後について「そのときにならないと分かりません」と言葉を濁した。
★ヨシノブは巨人優勝へ全力
20日のカナダ戦から3試合連続本塁打を放った高橋由(巨人)は「自分の持っている力を出して戦えた」と振り返った。日本不在の間に所属の巨人は自力優勝が消滅したが、「金メダルを獲れなかった悔しさを、今後の戦いにぶつけたい」とキッパリ。アテネで逃した金メダルの代わりに、チャンピオンフラッグ獲得を目指す。
◆城島(ダイエー) 「しっかり握手してくださって、感動しました」
◆和田一(西武) 「ジーンと来るものがありました。一緒に(五輪に)出たかったけど、会えてよかったです。まだ先がありますからね」
★王監督も「よかったね」
日本代表を長嶋監督が出迎えたことを伝え聞いたダイエー・王監督は「本当? よかったね。それだけ回復しているということだからね」と喜んだ。これまでは騒ぎになることを避け、お見舞いも自粛していた。やっと公の場に姿を見せたことで「これでミスターの情報がいろいろ出てくるんじゃないかな」とも話していた。
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