【野球】ミスターの願いかなえた! 奮投松坂「絶対に金」

打球が松坂の右腕を直撃 17日の野球1次リーグ第3戦で日本は最大のライバル、キューバを撃沈に成功した。先発・松坂大輔投手(23)=西武=が右腕に打球を受けながら、八回途中3失点と熱投。五輪通算4試合目で初勝利を挙げ、悲願の金メダルをグッと引き寄せた。〔写真右:打球が右上腕部を直撃した瞬間の松坂=撮影・尾崎修二。同中:右腕のアイシングが痛々しい松坂。キューバ戦の熱投後は、ウイニングボールをそっとしまった=撮影・尾崎修二。同下:ミスターの思いは通じた。中村は四回、城島とアベック本塁打=撮影・塩浦孝明



 突然のアクシデントが松坂を襲った。無安打で迎えた四回一死。グリエルの打球が松坂の右上腕部を直撃した。約3トンと推定される衝撃に、激痛が走る。それでも、真横に落ちた白球を背番号「18」は拾いに走った。

 「思ったより打球が速くなかった。ボールから目を離してしまった」

ウイニングボールをそっとしまう松坂 降板もやむなし、と思われたが、痛みに顔をしかめたのはほんの数秒。ベンチに戻り、患部にテーピングを巻くと、松坂は小走りにマウンドへと戻っていった。

 勝利への執念だった。前回シドニー大会では3試合に登板したものの、0勝1敗。2年前の巨人との日本シリーズ開幕黒星も含め、いつしか『大舞台に弱い』レッテルが張られるようになった。だが、世界最高の舞台に再び舞い戻った豪腕には迷いも焦りもなかった。

 「もうリベンジという言葉は使いたくない。雪辱とも思っていない。それより、成長した自分を見てほしい」。開幕直前、松坂は真っ白な心境を吐露した。再編問題に揺れ動く日本球界のため、そして長嶋監督の悲願のために。宿舎ホテルの自室の壁には、離日前に長嶋監督から各選手に贈られたメッセージが張ってある。試合前には必ずそれに目を通し、闘う魂に火をつけている。

中村がホームラン 攻撃中にアイシングを繰り返し、八回まで三塁を踏ませぬ力投。右腕を痛めた後も151キロの直球を投げ込んだ。しかし、九回に守備の乱れも重なり、3失点で降板。「(リリーフの)石井さんに迷惑をかけた。自分に腹立たしい」と口を真一文字に結んだ。プライドと責任感が、今の松坂の原動力だ。

 「監督のためにも絶対に勝つ」

 18日の豪州戦前には元気に芝生へと飛び出して練習に参加し、右腕は大丈夫、をアピールした松坂。次回登板は24日の準決勝が濃厚。豪腕が再びうなりをあげる。

 ◆長嶋茂雄監督 「何と言っても、松坂君のアクシデントにも負けない鬼気迫る投球に尽きる。もう一度戦うであろうキューバにプレッシャーをかけられたことは事実です。しかし、スキを見せると畳み込む野球をするのがキューバ。九回に交代した後の松坂君の悔しい表情が良かった。次の登板にこの悔しさはつながるでしょう。それにしても右腕は大丈夫なのか。まともに当たったので、とても心配している。1次リーグとはいえ、私の悲願がひとつかなった思いがして、とてもうれしい」(テレビ観戦後、長男・一茂氏を通じてファクスで選手団にメッセージを送った)

 ◆キューバ戦の松坂について中畑ヘッドコーチ 「大輔のピッチングに尽きる。交代は心を鬼にして代わってもらった。けがをしての力投、頭が下がります」

 ◆負傷後も松坂を続投させた大野投手コーチ 「本人の気持ちとベンチの気持ちが一緒だった」

★和田一、初安打が先制2ラン

 指名打者・和田一(西武)がチームを波に乗せた。二回二死一塁で左翼芝生席に、五輪初安打となる1号2ラン。右腕をグッと突き上げて喜びを爆発させた。「キューバが相手で気持ちが入っていました。日本の野球にとってもこの勝利は大きい。(松坂)大輔も頑張って投げていたから」と白い歯を見せた。

★城島中押しの1号

 城島(ダイエー)が四回、中押しとなる1号ソロを左翼に放った。「松坂に喜んでもらえるなら、いいホームランだったかな」と正妻らしい“内助の功”をアピール。その松坂については「(負傷で)ダメなら代わってもらいますと言ってあった。捕手として(首脳陣から)意見を求められたから、正しい判断をしたつもり」と厳しい一面も。

★谷亮子がスタンドから夫を声援

 柔道女子48キロ級の金メダリストで谷(オリックス)の夫人でもある谷亮子が、初めてスタンドでキューバ戦を観戦。四回に谷が左前打を放つと、拍手で喜んだ。「改めて夫婦で五輪に出場したんだな、と実感しました。長嶋さんも日本からパワーを送っていると思います」。4打数1安打の谷も「勝てたのが良かった」と胸をなで下ろしていた。

 ◆キューバ戦の四回に2号ソロを放った中村(近鉄) 「キューバとは決勝でメダルをかけて闘う。次も打ち崩す」

 ◆キューバ戦の九回一死から登板し、2者連続三振締めの石井(ヤクルト) 「大輔が頑張っていたし、絶対に抑えてやるという気持ちでした」

★キューバ監督も松坂に脱帽

 国際主要大会で3年ぶりに日本に黒星を喫したベレス監督は、苦虫をかみつぶした。「投手の立ち上がりが悪く、攻撃をチーム打撃に変えざるを得なかった」と猛省。「松坂は素晴らしかった。でも、われわれも準決勝に向けて、今後が重要。結果的にメダルを獲得するのはわれわれだ」と言葉に力を込めた。


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