【野球】逆転勝ちの日本、中畑ヘッド炎の猛抗議!

猛抗議する中畑ヘッド=左から2人目 長嶋ジャパン、炎の猛抗議! 野球五輪日本代表が16日、予選リーグ第2戦でオランダに8−3の逆転勝利。試合をひっくり返した五回には、オランダのルール上の不備を中畑清ヘッドコーチ(50)が約30分間にわたって猛烈抗議。前代未聞、あわや没収試合の執念で開幕2連勝をもぎ取った。〔写真右:オランダのメンバー表記入ミスについて猛抗議する中畑ヘッド=左から2人目。試合は25分にわたって中断した=撮影・尾崎修二。同下:八回、伏兵・藤本が2ランを放ち、試合を決めた=撮影・尾崎修二



 全身から怒りが吹き出ていた。五回だ。“赤鬼”と化した中畑ヘッドコーチが、ポールトン球審(豪)に詰め寄る。投手交代を巡り、オランダとの場外戦のゴングが鳴った。

 「歴然としたルール違反だ! 本当なら没収試合でもおかしくない。(オランダに)プライドはないのかといわれたが、ルールを守らない相手に言われたくないよ!!」

藤本 逆転勝利の余韻すらない。同コーチは試合後も声を荒らげ、怒りを爆発させていた。先発・岩隈の乱調からオランダにリードを許す、まさかの展開。しかし、五回に中村の同点適時打と小笠原の押し出し四球で勝ち越しに成功した。オランダベンチがたまらず球審に投手交代を告げた瞬間、中畑ヘッドと柴田総務担当らが、満を持して日本ベンチを飛び出した。

 問題は試合前のメンバー表交換にあった。監督、コーチを含めて出場予定選手すべてを明記した日本に対し、オランダは指名打者を含む先発メンバー10人のみ。つまり『オランダは10人で戦うという意思を公然と示した。それ以外の交代は絶対に認められない』−が日本側の見解だった。大会規定の抗議代金200ドル(約2万2000円)を同総務がポケットマネーから工面。大会役員に手渡すと「ルールブックで確認せよ」と執拗(しつよう)に抗議した。25分間にわたる中断は、勝利にかける日本ベンチの執念に他ならなかった。

 結局、日本の主張は認められず、試合は続行された。だが、今度は八回にオランダが200ドルを提出し、日本の長時間にわたった抗議に対して「早く試合を進める努力をしていない」と“報復”の抗議。再び5分間の中断に入った。それでも日の丸戦士は集中力を切らすことなく中継ぎ陣が好投。八回裏に藤本の2ランなどで4点を追加し、試合を決めた。

 すべての始まりは伏兵・オランダに対するまさかの苦戦。これも五輪に潜む魔物か。「もう何が起こっても驚きませんよ」。宮本主将の一言が、逆境にも耐え得る長嶋ジャパンの真の強さを証明していた。

山田貴史


 ◆抗議に出た日本代表の柴田総務担当 「メンバー表はいわば、その試合の最終登録用紙。交代選手も、ドーピング検査対象選手も、その中から出さなければならないのでは。JOC(日本オリンピック委員会)に再度、確認します」

■五輪猛抗議アラカルト■
 88年ソウル大会 ボクシングで韓国選手の関係者が判定負けに抗議してリング上に乱入。韓国の監督、コーチが主審のむなぐらをつかむなど大暴れ。ジャッジペーパーも破り捨てられるなど、8時間にわたって試合が中断した

 92年バルセロナ大会 陸上男子1万メートル決勝で、1位でゴールインしたハドリー・スカー(モロッコ)が「同僚選手の援助(他の走者を妨害)を得た」という理由で失格処分。しかし、モロッコ選手団の抗議で国際陸連が審議会を開き、再逆転でスカーの金が確定

 00年シドニー大会 柔道男子100キロ超級に出場した日本の篠原信一は、決勝でドイエ(フランス)に内またすかしをかけ、一本勝ちと思われた。しかし、主審と副審の1人がドイエの「有効」。そのまま、試合はドイエの僅差勝利に終わった。山下監督の抗議に、審判理事は「私が見ても篠原の一本。でも判定は覆らない」。その後、国際柔道連盟の理事会でも審議されたが、勝敗は覆らなかった



★オランダ監督も頭から湯気

 オランダのエンホーン監督は、中畑ヘッド以上に興奮していた。試合後の会見で「開幕前の監督会議で、交代は登録24選手で可能としたはずだ。日本は認めないと言ったが、球審も試合前に何も言わなかったじゃないか」と怒り心頭。日本の抗議中には「何が悪いんだ。だったらオレが投げてやる」と大声を張り上げていた。

★ロングリリーフ黒田、MAX164キロ!?

 3番手として四回から登板した黒田(広島)が、5回を1安打無失点と好投。オランダの勢いを断ち切った。球速も日本人最速の?164キロを表示。「血管が切れそうでした。でも、気持ちが乗っていた。164キロ? スピードは気にしてませんから。チームに貢献できてよかった」と満足した表情だった。

★ノリ連夜の活躍、同点二塁打

 開幕戦で2安打4打点と奮闘した中村(近鉄)が、連夜の大活躍。五回に左翼線に同点二塁打を放った。「みんなの気持ちが打球に乗り移った。(2度の中断で)嫌な雰囲気だったから、勝ててチームに勢いが出るんじゃないですか」と振り返っていた。

★藤本一発で試合決めた

 9番の藤本(阪神)がヒーローだった。二回に右前適時打。八回には試合を決める値千金の初アーチを右翼芝生席にぶち込んだ。7月の壮行戦から結果が出なかったが、「ホームランはできすぎ。最初はチームに慣れてなかったけど、アテネに来て腹をくくることができた」と会心の笑顔だった。

 ◆二回途中でKOされた先発の岩隈(近鉄) 「緊張して硬くなっていた。勝ってくれてみんなに感謝します」

 ◆中継ぎ陣を好リードした城島(ダイエー) 「先発が崩れたときに2番手以降をどうリードするかを考えていた」

 ◆日本代表・高木守備走塁コーチ 「逆転勝ち? こういう試合でチームの結束も強くなるでしょう」

 ◆長嶋茂雄監督 「お疲れさまでした。ナイスゲームでした。テレビの画像で見るところ、風も非常に強く、コンディションもあまり良くなかったと思うけども、打撃陣の方は粘り強く、点を着実に取って追いつき、最終的に追い越せた。先に点を取られたが、見ていて打撃の方は何か余裕みたいなものが感じられた。どこかでひっくり返してやろうという気持ちが毎打席、各選手に出ていた。

 守備も非常に丁寧にゴロをさばいていたし、集中力がきのう(15日のイタリア戦)よりも感じられました。残念ながら、こちら東京では試合途中で中継が中断したため逆転の場面こそ見られませんでしたが、後半はまた中継を見ていました。これだけ風が強い日だと、試合が終わった後の疲労感が普通の試合よりも残るだろうから、きょうは宿舎で体を調整して、しっかり休んでください。

 先発した岩隈は自分本来の投球がまったくできなかったと思う。確かに風が強く、彼の投球フォームからすると、風の影響でうまくタメができず、コントロールにかなりバラつきがあった。これも国際試合の経験の一つとして、これからまた登板機会があるから、切り替えてほしい。後続の投手は非常によかった。石井、黒田、岩瀬がきっちり抑えてくれたことが今回の勝因だろう」
(このメッセージは長男の一茂氏が代筆。17日朝の食事の時に中畑ヘッドコーチが選手に読み上げた)


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