「侍ハードラー」為末、メダルへ孤高の挑戦
アテネ五輪では全28競技が実施される。各競技で続々と“日の丸代表”が決まりつつある中で、14日にはメーン競技『陸上』の日本代表選手が新たに正式決定。3月に決定済みのマラソン6人を加え、陸上代表は33人となった。2大会連続出場となる男子400メートル障害の01年世界選手権銅メダリスト・為末大(26)は、アテネ行き決定と同時に公式ホームページを開設。1億国民に情報発信して、五輪のメダルを狙う。〔写真右:01年世界選手権で銅メダルを獲った際の為末の快走。この快挙をアテネで再現してみせる=共同。同下:代表発表の席で笑顔をみせる為末、高平、福士、末続、沢野、寺野=左から。アテネでブレークだ=撮影・小倉元司〕
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自ら「侍ハードラー」と名乗る。1メートル70と小柄な体で高さ91.4センチのハードルを跳び越していく為末が、転倒して予選落ちしたシドニー五輪のリベンジのためにアテネに向かう。
「シドニーで失敗しているので思い入れが強い。日本選手団のユニホームに袖を通して、悔しさがよみがえってきたし、リベンジできる状況なのをうれしく思います」
昨秋からサッカーの中田英寿、競泳の北島康介らと同じマネジメント事務所に所属。アテネ五輪出場を決めた晴れの日に、中田、北島に続いてインターネットの公式サイトを開設した。「侍」として、世界に日本の精神を伝えるのが目的だ。
「出場する大会を告知できるのがうれしい。自分の考えていることも、なるべくたくさん発信していきます」
01年から本格的に欧州グランプリを転戦する。そこは弱肉強食の世界。弱い選手は鉄道の時刻表を片手に路地裏の安宿に泊まり、格下の大会から実績を積まなければいけない。強くなれば高額賞金の大会に招待され、高級ホテルに泊まって試合では有利なレーンも選べる。01年世界選手権で銅メダルを獲った為末はどちらも体験。圧倒的に欧米人優位の世界で「侍」精神をつかんだ。アテネ前も今月下旬から6試合を転戦する予定だ。
「グランプリで五輪のライバルと実際に競っておくことは重要です。アテネではなんとしてもメダルをと思ってます」
昨年は在米ウクライナ人コーチとの意思疎通がうまくいかず不調。11月に大阪ガスを退社し、専任のコーチもトレーナーもいない厳しい状況を選んで転機を図った。五輪のメダル獲得は、プロ選手にとって競技や生活の環境改善のために最高の手段だ。アテネで為末の孤高の挑戦が始まる。
(牧慈)
| ★為末 大(ためすえ・だい)★ |
| ◆生まれ |
1978年5月3日、広島市佐伯区。26歳。五日市中→皆実高→法大→大阪ガス→APF |
| ◆サイズ |
公式には身長1メートル70だが、本人申告によると1メートル69、64キロ |
| ◆男らしく |
姉(愛さん)と妹(祥さん)の間に生まれたため、ことさら男らしくと育てられた。木登りをし、野原を駆け回って育ったが、球技は苦手。小学校の卒業文集には「オリンピックに出たい」と書いた |
| ◆天才少年 |
五日市中で本格的に陸上を始め、200メートル21秒36は今も中学日本記録。皆実高3年の96年インタハイ、国体で400メートル障害2冠、世界ジュニア400メートル4位などジュニア時代から将来を嘱望されていた |
| ◆おしゃれ |
法大時代は元NBAの“悪童”デニス・ロッドマンに憧れて茶髪&ピアスだったが、大阪ガス入社前に丸刈りに。帽子とサングラスにこだわる陸上界のファッションリーダー |
| ◆留年、浪人 |
01年4月から大阪ガスに入社予定だったが、単位不足で法大を卒業できず、翌年改めて入社。昨年10月の退社後は法大を拠点に練習。3月にAPF(アジアパートナーシップファンド)と契約するまではは約4カ月間無職だった |
| ◆亡父のために |
昨年7月20日に父・敏行さんが54歳の若さで他界。直後のパリ世界選手権は準決勝で敗退したが、アテネ五輪後は墓前に吉報を届けたい |
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★陸上代表総勢33人
日本陸連は14日、東京都内で開いた理事会、評議員会で、アテネ五輪代表に男子短距離の朝原宣治(31)=大阪ガス=ら17人を新たに選出した。
昨年の世界選手権(パリ)でメダルを獲得した男子短距離の末続慎吾(24)、同ハンマー投げの室伏広治(29)=ともにミズノ=のほか、6日に鳥取で終了した日本選手権で選考基準を満たして自動的に代表に決まった同四百メートル障害の為末大(26)=APF=ら8人も正式に承認。3月に発表済みの男女マラソン6人を加え、陸上の代表は33人となった。
7月11日の南部記念(札幌)後に一部の種目で、追加発表となる見込み。
★末続慎吾は200走らない?
昨夏パリ世界選手権男子200メートル銅メダルですでに内定していた末続慎吾は、アテネ五輪での出場種目を100メートルと400メートルリレーに絞る可能性が高まってきた。「200は1人でやらなきゃいけないけど、100は朝原さんがいるから安心です」と明言は避けたが、今季はアテネまで200メートルに出場しない予定で、今月下旬に2試合出場する欧州GPの種目はいずれも100メートル。7月上旬にも五輪出場レースを決定する。
★朝原は大阪で気合
アトランタ、シドニーに続いて3大会連続で五輪代表に選ばれた朝原宣治は兵庫・西宮市の大阪ガスのグラウンドでの練習中に代表決定を伝えられた。ともに代表に選ばれた小坂田淳と握手を交わし、健闘を誓い合った。アテネでは前回のシドニーで走れなかった100メートルでの出場。「これからの時間を大切に、日本代表の名に恥じないレースを見せたい」とコメントした。
★室伏兄妹同時代表はならず
日本初の兄妹同時五輪代表はならず。すでに内定していた兄・室伏広治に続き、妹の由佳も今月の日本選手権の女子ハンマー投げで五輪参加標準記録Bを突破する66メートル12で優勝したが、「世界ランクではきわめて下位」(沢木強化委員長)として落選した。今季世界ランク49位。今後の競技会でA標準(67メートル50)を突破すれば追加代表の可能性も残されているが、この日はコメントを発しなかった。
◆男子棒高跳び代表の沢野大地 「アテネでは必ず決勝に行って、力を出し切って入賞します。去年(パリ世界選手権で決勝進出も棄権)のようなことはないように、跳びきってきたいです」
◆男子走り幅跳び代表の寺野伸一 「アテネで8メートル25の日本記録を破るのが目標。自己ベストを出せば、すごい結果がついてくるんじゃないかと思ってます」
◆女子長距離代表の福士加代子 「アテネで自己ベストを1秒でも縮めたい。五輪は開会式がすばらしいので、ぜひ出てみたいですね」
| ★代表追加★ |
| 陸上代表の最大枠は40人。今回代表が決まらなかった種目については、7月11日の南部記念陸上を最終選考会とし、追加の代表を決定する。対象はA標準突破者が2人になる男子110メートル障害とリレー要員。その他の種目は日本選手権優勝者が7月11日までにA標準を突破した際に考慮される。男女のリレー種目は7月20日付の世界ランク16位で出場権を得る。 |
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| ★金で500万円★ |
| 日本陸連は14日の理事会で、アテネ五輪の入賞者と専任コーチへの報奨金を決めた。前回のシドニー同様、金メダルの場合は選手に500万円、コーチに150万円をそれぞれ支給する。銀は選手300万円、コーチ100万円、銅は選手200万円、コーチ50万円で、8位までが対象。リレー種目は個人種目の半額となる。 |
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| ★世界の勢力★ |
| 種目によって勢力図は違う。トラックの短距離は世界中のあらゆる国から選手が出場するが、欧米の黒人選手が優位を占める。中距離では欧州勢、長距離はケニア、エチオピアなどアフリカ勢が強い。フィールド種目の跳躍では欧米、投てきでは東欧勢に有力選手がそろう。ロードの競歩は欧州や中米勢、マラソンはアフリカ、欧州、日本などで争われる。 |
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| ★五輪日本史★ |
| 陸上は五輪で金5銀7銅7のメダルを獲得している。28年アムステルダム五輪の三段跳びで織田幹雄が日本初の五輪金メダルを獲得するなど、戦前は走り幅跳び、三段跳び、棒高跳びの跳躍種目で金3銀3銅4。女子ではアムステルダム五輪800メートルで人見絹枝が銀メダルを獲得した。
戦後のメダルは男女マラソンのみ。男子の円谷幸吉、君原健二、森下広一に続き、90年代以降は有森裕子、高橋尚子ら女子の活躍が目立つ。近年はトラック、フィールド種目でも日本勢が躍進。短距離の末続慎吾、ハンマー投げの室伏広治、400メートル障害の為末大が世界選手権の表彰台に上がっており、五輪メダル獲得の期待がかかる。 |
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| ★ルール★ |
| 五輪では男子24、女子22種目が実施される。トラック種目(短中長距離)とロード種目(競歩、マラソン)はタイムで着順を争い、フィールド種目(跳躍、投てき)は跳躍した距離や高さ、投てきの飛距離を競う。混成種目(十種、七種競技)は総合得点で競う。トラックの200メートル以下の種目と走り幅跳びは追い風2メートル以下で実施された場合のみ記録が公認される。 |
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