女子1万メートル・福士加代子、五輪代表に決定

 陸上日本選手権は男女8種目の決勝を行い、女子1万メートルで福士加代子(22)=ワコール=が31分32秒09で3連覇。女戦士の激戦区を制した。すでにアテネ五輪参加標準記録Aを突破しているため、同五輪代表に決定。2位の田中めぐみ(28)=しまむら=と弘山晴美(37)=資生堂=もアテネ行きが当確。男子110メートル障害は伏兵の田野中輔(25)=富士通=が新旧の日本記録保持者2人を破って初優勝し、五輪出場に望みをつなげた。〔写真:激戦区の女子1万メートルを制した福士。逆境を乗り越えた強さも大きな武器だ=撮影・川村寧

★2位以下をちぎって独走

 日本選手に敵はいない。福士の負けん気が爆発だ。午後5時を回ったスタート時で25度を超す猛暑の中、最初の一歩から先頭に立ち、2位以下をちぎって独走。ラスト1周で約2秒差にまで迫られたが、まさに完勝。A標準を突破している選手が7人もいる激戦の戦いを制し若き第一人者のプライドを見せつけた。

 「最初から行ってまえーって感じで。でも暑くて、体がしんどくて…。1200メートルでバテちゃいました」。31分32秒09のタイムは自己ベストより約40秒も遅いが、A標準を切っての日本選手権3連覇。01年にブレークしたカッ飛び娘がついに五輪への挑戦権を手に入れた。「やった。これで交通事故に遭わなければ、行けますね」。笑顔が弾けた。

 19歳の01年に日本ジュニア新を連発、02年には3000メートルと5000メートルで日本新をマークするなど順風満帆の競技人生だったが、同年12月の全日本実業団駅伝で転倒。左ひざじん帯損傷の重傷を負って半年間のブランク。昨年は走りのバランスが崩れた。パリ世界選手権でも1万メートル11位、5000メートル予選落ちと惨敗。世界の壁を痛感した。

 左足の脚筋力の強化が進み、フォームが修正されたのは今年に入ってから。1月の都道府県対抗女子駅伝の第9区(10キロ)で区間新を出し、復調の手ごたえをつかんだ。今後は欧州遠征で3試合に出場し、5000メートルの日本記録を更新してからアテネに向かう計画。「いい記録をもって次の目標を達成したい」と永山忠幸監督(44)もアテネでの旋風を予告する。

 この日の朝には鳥取砂丘に足を運んだ。「海が近くてキレイだった」。緊張感などどこ吹く風の強心臓。自信を取り戻した福士が、低迷する日本女子トラック界に嵐を呼び起こす。

(牧慈)

近年の日本勢の
女子1万メートル世界大会成績
▼2000年シドニー五輪
10位川上 優子31・27・44
15位高橋千恵美31・52・59
20位弘山 晴美32・24・17
▼01年エドモントン世界選手権
 9位岡本 治子32・14・56
13位野口みずき32・19・94
19位小崎 まり32・39・17
▼03年パリ世界選手権
11位福士加代子31・10・57
14位渋井 陽子31・42・01
15位田中めぐみ31・47・00
★福士加代子(ふくし・かよこ)

 1982(昭和57)年3月25日、青森・板柳町生まれ、22歳。板柳中時代はソフトボール部で捕手。五所川原工高で陸上を始める。00年ワコール入社。02年に3000と5000で日本新記録をマークし、釜山アジア大会で5000、1万ともに銀メダル。03年パリ世界選手権は5000予選落ち、1万11位。父・正幸さん(54)と母・ちぎ子さん(52)は理容師。1メートル61、45キロ。

★田中めぐみ、弘山晴美も五輪出場を確実に

 女子1万メートルで2位の田中めぐみ(しまむら)、3位の弘山晴美(資生堂)はA標準記録を突破しており、アテネ五輪出場を確実にした。田中は名古屋国際女子マラソン2位で代表を逃したが、トラック競技で2大会連続出場。「マラソンでかなり悔しい負け方をしたけど、日本選手権に出てよかった」とホッとした表情。3大会連続出場となる35歳、弘山は大阪国際女子マラソン5位からの巻き返し。「ラストは意地。来年の日本選手権には出るかわからない。しっかり力を出したかった」と口元を緩めた。

★世界の勢力図は

 現在、トラックの女子長距離はエチオピア勢が圧倒的に強く、昨夏のパリ世界選手権でも5000メートル(ディババ)、1万メートル(アデレ)でともに金メダル。1万メートルは金銀独占で、3位には中国の孫英傑。これにロシア勢が続く展開だ。日本勢はかつて千葉真子が96年アトランタ五輪で5位、97年アテネ世界選手権で銅メダルを獲ったが、マラソン重視の傾向から、その後は世界との差が開き、近年の世界大会では入賞もない。パリでの福士も周回遅れを免れるのがやっとだった。


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