健闘マラソン日本!油谷5位、諏訪6位−最強女子に学べ

諏訪と油谷 最後まで、あきらめない。心は折れない。1メートル63、51キロ。日本の小さなエースが、粘る。35キロでは8番手だった油谷が、日本人トップでゴールに駆け込んだ懸け込んだ。5位。メダルには手は届かなかったが、男子では3大会ぶりのマラソン入賞だ。 〔写真:油谷(右)が5位、諏訪も6位とダブル入賞の健闘も、女子の快挙には見劣りも…。学ぶべきところは学びます(AP)

 「また5位ですか…。どうなんでしょう。もっと、がんばれということでしょう。メダルがほしかったので、結果としては満足してないです」

 喜んでいいのか悪いのか。今回も前に4人の外国選手がいた。01年、03年世界選手権と全く同じような光景に、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 上り坂こそ世界の一線級に食らいついたが、32キロからの下りであっさり引き離された。世界記録保持者テルガトや昨年世界選手権覇者ガリブが終盤失速したのを尻目に粘ったが、優勝したバルディニは5キロを14分半のハイペース。とてもかなわなかった。

 諏訪(6位)とダブル入賞は、92年バルセロナ五輪で森下、中山、谷口の3選手が入賞して以来。層の厚い男子では確かに大健闘。だが、女子では野口みずき(グローバリー)が同じコースで、勝負のスパートを成功させてそのままゴール。シドニー五輪の高橋尚子に続き、日本勢五輪連覇の快挙を遂げているだけに、指摘も厳しくなってしまう。

 「トレーニングは気象条件、コースを考慮した中でやらなければいけないが、女子の取り組みの緻密さに比べて、男子は甘い」

 日本陸連・沢木啓祐強化委員長は男子陣営の研究不足、作戦ミスに苦言を呈した。いきなりスピードをつけるのは無理でも、コースに合わせた攻略法を練れば野口のように勝てる。野口はスイス・サンモリッツの高地で高低差300メートルのつづら道を上下して、苦手だった下りの走りを克服したのだ。「かつては女子が男子の練習をマネしたものだが、これからは男子が女子から学ばないといけない」。

 女子3選手がアテネ攻略のためサンモリッツ、中国・昆明(土佐礼子)、米ネダーランド(坂本直子)をそれぞれ選んで長期合宿を張り、アテネ試走も2回こなしたのに対し、男子3選手の試走1回だけ。全員が慣れ親しんだ北海道での練習に終始した。

 今回、坂本陣営がスタート地点付近に借りた宿舎を油谷陣営が引き継いだように、男女チームの交流は深い。男女の力は違うとはいえ、沢木氏は男子陣の奮起をうながす意味で、これからは五輪対策の姿勢も引き継ぎ、「男女共闘」の体制づくりもプランする。“女性教師”と生徒たち。北京へのキーワードが決まった。

 ◆五輪で、師と仰ぐ瀬古利彦コーチを超える願いがかなわなかった国近友昭 「20キロぐらいから体がついていかなかった。集団の後ろで走っていたが、自分のスタイルじゃなかった。積極的にいけばよかった。力を出し切れず、情けない結果になった。一からやり直す」

★中山竹通の目

中山竹通 予想どおりのレースだった。デ・リマが仕掛けたが、後続はなぜけん制し合ったのか。日本勢の対応は遅かった。あれでは入賞が精いっぱい。メダルを狙う走りではなかった。

 テルガトやガリブなどのように、外国の選手はメダルを獲れないとあきらめたら、レースを捨てることがある。油谷も諏訪もそういった選手を最後に拾って順位を上げただけだった。

 たしかに5キロを14分半で上がる力も必要だし、アテネのコースを想定した練習をすることも大事だろう。ただ、日本勢も5番や6番に入る力はあるのだから、それより上にいきたかったら、スピードがどうこうよりも、試合に対するたくましさが必要だ。

 日本の選手はメダルや入賞を意識して無難にいこうとしすぎる。今回もただ集団についていっただけ。前で引っ張ったわけでもなく、揺さぶって相手の表情をうかがったわけでもない。こういうレースをしていたら、同じことの繰り返しだ。

 自分がトップクラスの選手だと自覚したら、トラックに出るときもハーフマラソンに出るときも、自分が先頭に立ったり、ペースを上げ下げしてみたりと、普段のレースから実戦的なことを試さないといけない。

 デ・リマは金メダルを狙って20キロで思い切って飛び出した。バルディニも下りで勝負をかけた。男子の大人数の中で3番以内に入ろうとしたら、失敗を恐れては進歩はない。世界のトップ選手も勝ったり負けたりを繰り返し、学んでいるのだから。

ソウル、バルセロナ五輪代表、愛知製鋼監督

★レースVTR★

 日本勢含む30人以上の集団から、20キロすぎでデ・リマが仕掛けた。上りで勝負に出て狙い通りに独走に。国近が中間付近で大きく後退。油谷、諏訪も食らい付いたが、下りに入る前には差がつき始めた。だが、36キロすぎにデ・リマにアクシデントが起こる。沿道から飛び出した男に押さえ付けられ、数秒でレースに戻ったが、右ももをさすり表情をゆがめた。ここで後続が差を縮め、38キロ付近でバルディニとケフレジギがデ・リマを抜いた。日本勢は上りでの劣勢が最後まで響いた。

■最近の五輪男子マラソン日本人成績■ 
名   前 所属・国籍 タ イ ム 
【84年ロサンゼルス】
(1) ロ ペ ス ポルトガル 2時間9分21秒
(4) 宗   猛 旭化成 2時間10分55秒
(14 瀬古 利彦 エスビー食品 2時間14分13秒
(17) 宗   茂 旭化成 2時間14分38秒
【88年ソウル】
(1) ボルディン イタリア 2時間10分32秒
(4) 中山 竹通 ダイエー 2時間11分5秒
(9) 瀬古 利彦 エスビー食品 2時間13分41秒
(17) 新宅永灯至 エスビー食品 2時間15分42秒
【92年バルセロナ】
(1) 黄 永 祚 韓  国 2時間13分23秒
(2) 森下 広一 旭化成 2時間13分45秒
(4) 中山 竹通 ダイエー 2時間14分2秒
(8) 谷口 浩美 旭化成 2時間14分42秒
【96年アトランタ】
(1) チュグワネ 南アフリカ 2時間12分36秒
(19) 谷口 浩美 旭化成 2時間17分26秒
(54) 大家 正喜 佐川急便 2時間22分13秒
(93) 実井謙二郎 日清食品 2時間33分27秒
【00年シドニー】 
(1) ア ベ ラ エチオピア 2時間10分11秒
(21) 川嶋 伸次 旭化成 2時間17分21秒
(41) 佐藤 信之 旭化成 2時間20分52秒
  犬伏 孝行 大塚製薬 途中棄権 
【04年アテネ】
(1) バルディニ イタリア 2時間10分55秒
(5) 油谷  繁 中国電力 2時間13分11秒
(6) 諏訪 利成 日清食品 2時間13分24秒
(41) 国近 友昭 エスビー食品 2時間21分14秒
【注】所属は当時

★女子は

 メダルの有力候補だった野口みずき(26)=グローバリー=が、期待に応えてヌデレバ(ケニア)の追撃を振り切り、2時間26分20秒で優勝。シドニー五輪マラソンで優勝した高橋尚子に続き、日本勢が大会2連覇となった。野口は25キロ過ぎからスパートをかけ、いっきに抜け出した。土佐礼子(三井住友海上)は2時間28分44秒で5位、坂本直子(天満屋)も2時間31分43秒で7位と、日本人3選手全員が入賞を果たした。世界最高記録保持者のラドクリフ(英国)が36キロ付近で棄権するなど、気温35度というアテネの酷暑の中、過酷なレースとなった。


著作権、リンク、個人情報について