アヌシュ再検査に応じず、室伏の「金」は決定的

アヌシュ 陸上男子ハンマー投げで優勝したアドリアン・アヌシュ(29)=ハンガリー=が、国際オリンピック委員会(IOC)から求められていたドーピング(禁止薬物使用)再検査を、27日の期限までに受けなかったことが分かった。IOCが検査拒否と認定すれば、アヌシュはドーピング違反に問われ失格処分となる。2位の室伏広治(29)=ミズノ=の繰り上げ金メダルが確実になった。〔写真右:気合を込めた投てきで優勝したアヌシュ。再検査要請を拒否し、金はく奪は決定的だ=AP。同下:こちらは余裕の室伏。繰り上がり金となりそう=撮影・川村寧



室伏広治 検査期限にアヌシュは現れなかった。薬物疑惑の渦中にいるアヌシュは、オーストリア国境付近の指定場所にハンガリー時間の27日午後4時(日本時間同11時)までに出頭し、再検査に応じるよう要請されていた。ハンガリー通信によると、アヌシュは姿を見せず、待機していた検査官は退去した。

 ハンガリー・オリンピック委員会のシュミット会長は「期限までに尿検体を提出するようコーチに伝えた」と述べた。同会長はハンガリーのラジオ局とのインタビューで「アヌシュが新しい尿検体をIOCに提出しなければ、金メダルを失うことになるだろう」と明言した。

 アヌシュは26日、ハンガリーのメディアに対する書簡の中で「(再検査で)別の検体を提出したとしても、真実の結果が出る保証はどこにある。検体が操作されることを許すわけにはいかない」と再検査が不正に操作される可能性を指摘した上で、検査に応じない可能性を示唆していた。

 22日のハンマー投げ決勝で、28センチ差で室伏を振り切って優勝したアヌシュが、直後のドーピング検査で提出した検体(尿)はパスした。しかし、アヌシュの同僚で、男子円盤投げで優勝したローベルト・ファゼカシュが、検体をすり替えようとしたと指摘され、金メダルをはく奪された。

 「アヌシュも同様の手を使ったのでは」という疑念を抱いたIOC関係者は、AP通信に対し「IOCは、アヌシュが本人の尿検体をきちんと提出したかどうかを明確にしようとしている」と述べた。日本オリンピック委員会(JOC)も、25日にIOCへ徹底調査を正式要請していた。

 五輪選手には、IOCの追跡検査に応じる義務がある。アヌシュが検査場所に現れなかったことが違反に問われれば、IOCは規律委員会、理事会で処分を検討する。アヌシュの金がはく奪されれば、室伏が繰り上がる。帰国予定を延期してアテネに滞在している室伏に、朗報が届けられる可能性が高まった。

 アドリアン・アヌシュ 1975年6月28日、ハンガリー・セゲド市生まれ。29歳。96年アトランタ、00年シドニー両五輪に出場するも、ともに予選で敗退。03年世界陸上では最終6投目で80メートル36をマークして室伏を24センチ逆転し、銀メダルを獲得した。自己ベストは昨年8月にマークした84メートル19で世界歴代8位。1メートル94、118キロ。


 室伏 広治(むろふし・こうじ) 1974(昭和49)年10月8日、静岡県沼津市生まれ、29歳。千葉・成田高で本格的にハンマー投げを始め、中京大を経てミズノに所属。98年4月に父・重信氏の日本記録75メートル96を14年ぶりに更新。00年シドニー五輪9位。世界陸上は01年に銀、03年には銅メダルを獲得。自己記録84メートル86は日本記録で世界歴代3位。1メートル87、96キロ。


データBOX
室伏が繰り上げで1位となれば今五輪で日本勢が獲得した16個目の金メダルとなり、史上最多だった64年東京大会に並ぶ。当時の競技別の内訳は柔道3、ボクシング1、バレーボール1、体操5、レスリング5、重量挙げ1だった。

64年東京大会では「東洋の魔女」の異名をとったバレーボールの1個のみだった女子の金メダルが、今大会では5階級を制した柔道を筆頭に9個に急増。史上初めて男子を上回っている。



★父・重信氏は「不正があれば順位が繰り上がるのは当然」

 室伏の父でコーチの重信氏(58)が27日夜、名古屋空港に到着。アヌシュのドーピング疑惑について、重信氏は「報道でしか状況は分からないが、ドーピングは問題外。(違反があれば)順位が繰り上がるのは当然」と話した。

 「不正を行ったとしたら、そんな人は金(メダル)を獲っちゃいけない。検査のすり抜けなどはなくさないといけない」と力を込めた重信氏。「わずか28センチ差の2番というのは大変なこと。超えたと思っただけに残念だったが、よくやった」と息子をねぎらった。

★室伏は大使公邸激励会に出席

 室伏は26日に行われた在ギリシャ日本大使館によるアテネ五輪日本選手団の激励会に出席。アテネの大使公邸で催された激励会には、常陸宮ご夫妻が出席され、室伏のほかにホッケー、バレーボール、バスケットボールの女子選手ら試合を終えた競技の約80人が集まった。
 竹田恒和団長は「(望月敏夫)大使にこの会を開いていただき、日本にいるような感じになった」と話した。

★ファゼカシュが提訴へ

 ドーピング違反で金メダルをはく奪されたファゼカシュは26日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する意向を明らかにした。ハンガリーに帰国した同選手は「(検査で)陽性になったわけではない。IOCはわたしが提出した尿検体を調べ、その結果を知らせるべきだ」と述べた。

★重量挙げ銀メダリストが陽性反応

 重量挙げ男子105キロ級で銀メダルを獲得したフェレンツ・ジュルコビッチ(ハンガリー)がドーピング検査で筋肉増強剤のステロイドに陽性反応を示したことが27日、明らかになった。今後、国際オリンピック委員会(IOC)規律委員会の聴聞などを経て違反が確定する。


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