為末はシドニーの借り返せず、決勝の夢散る
また、夢散−。24日の陸上男子400メートル障害準決勝で、日本記録保持者の為末大(26)=APF=は48秒46の2組3着で決勝進出を逃した。1台目のハードルをひっかけて得意のロケットスタートが不発。転倒して予選落ちしたシドニー五輪の借りを返せず、北京五輪までの現役続行を宣言した。〔写真:メダルを目指した為末だが、快挙へのハードルは高かった=撮影・奈須稔〕
◇
悪夢のような光景が待っていた。ハードリングに定評のある為末が1台目をひっかけて倒す。ロケットスタートからの先行逃げ切りを戦法とする侍ハードラーの加速が鈍った。最後の直線に入る前に先頭の座を譲り、最後は執念で粘ったものの3位に敗れた。
「シドニーのときみたいに突風が吹いてきて、踏み切るタイミングがずれて、押し戻された。シドニーと同じ原因で敗退するのはなさけないですけど…身長が低い者の宿命。実力不足です」
初出場のシドニー五輪では9台目のハードルで転倒し、1分1秒81で予選落ち。「五輪の借りは五輪で返す」をテーマにしてきた4年間が、一瞬で吹き飛んだ。今季自己最高の48秒46も全体10位。メダルどころか決勝進出も逃した。
01年エドモントン世界選手権は47秒89の日本新で銅メダル。日本初の快挙で名を挙げた。その後は腰痛や米国拠点の練習が不調でスランプ。昨年は7月に父・敏行さんががんで死去したショックもあり、パリ世界選手権は準決勝で敗退した。それを契機にイバラの道へ。10月に大阪ガスを退社し、プロとなった。今季からAPFと単年契約。コーチもいない。欧州転戦もひとりきり。自分を追い込み、このアテネ五輪を人生の岐路にするつもりだった。
「メダルを獲ったら収入も増えるだろうし、それをもとに飲食業とかのビジネスをしたかった。そして陸上選手のための奨学金制度や年金制度をつくりたいんです」
欧州GPの最高峰、ローザンヌでのスーパーGP(7月6日)で3位に入るなどメダル獲得へ自信をもっての2度目の五輪だったが、気まぐれなアテネの風に人生計画を狂わされた。黙って引き下がれない。ターゲットは4年後に定めた。
「これでグラウンドから離れられなくなった。負け犬ですから、まずこの世界でしっかり結果を出さないと。北京で必ず借りを返します」
1メートル70の小柄な体で世界に挑む孤高の侍。アテネから北京への長い旅が始まる。
(牧慈)
| 為末 大(ためすえ・だい) 1978(昭和53)年5月3日、広島県生まれ。26歳。広島・五日市中で陸上で始め、皆実高3年時の国体400メートル障害で優勝。00年シドニー五輪出場。01年エドモントン世界陸上の400メートル障害で男子トラック種目初の銅メダルを獲得。自己記録47秒89は日本記録。法大から大阪ガスに入社したが、昨年10月に退社。今季からAPFに所属。1メートル69、67キロ。 |
|
★トラック勢は大苦戦
32年ロサンゼルス大会の吉岡隆徳以来の100メートルファイナリストを目指したエース末続が、2次予選で早々に敗退。ショックが伝染したのか、今五輪では100、200、400メートルの短距離種目で一人も準決勝に残れない、76年モントリオール大会以来の不振に陥っている。27日から1次予選が始まる400、1600メートル両リレー種目に汚名返上をかける。
★走り幅・寺野はアテネの風に心を乱す
陸上男子走り幅跳び予選の寺野伸一(サンクラブ)は、7メートル70で予選落ちした。助走を始める付近で、舞う風に心が乱れた。「風といっても微風ですよ」。その微調整がきかないほど、初めての五輪の雰囲気にのみ込まれていた。6月の日本選手権で、自己記録を16センチ伸ばす8メートル20をマーク。勢いに乗ってアテネに乗り込んだはずだったが、力を出し切れず。「調子は良かったけど…。やっぱりどんな条件でも跳べないと駄目」。
★女子100障の抗議は却下
国際陸連(IAAF)は25日、女子100メートル障害決勝に関するロシア陸連からの抗議を却下した。ロシア陸連は、イリーナ・シェフチェンコがカナダ選手の転倒に巻き込まれたとして再レースを求めた。5コースの優勝候補、ペルディタ・フェリシアンが最初のハードルでバランスを崩して転倒する際に、6コースのシェフチェンコとぶつかり、進路を妨害。シェフチェンコは途中棄権した。
★十種はシェブルレ五輪新戴冠、名実ともに世界一
「キング・オブ・アスリート」といわれる陸上十種競技の世界記録を持ちながら、五輪、世界選手権のタイトルに縁がなかった29歳のロマン・シェブルレ(チェコ)が、五輪の金メダルを獲得した。8893点は20年ぶりの五輪新記録だった。「五輪で勝つことは特別なこと。とても気持ちがいい」。順風満帆ではなかっただけに、言葉に実感がこもった。
★イシンバエワ、金に花添える4m91世界新
3時間を超える熱戦となった女子棒高跳びは、日付が変わった25日未明、エレーナ・イシンバエワ(ロシア)が4メートル91の世界新記録で優勝した。決勝は同じロシアのスベトラーナ・フェオファノワと一騎打ちに。4メートル90に挑んだフェオファノワが失敗し、優勝が決まった。「夢がかなった。今日は自分の日だと信じて跳んだ。負けるわけにはいかなかった」。あとは記録更新。自身の世界記録より1センチバーを上げ、4メートル91をクリアして優勝に花を添えた。
|