【シンクロ】チームで立花、武田、井村コーチ「有終の銀」

日本チームのリズム感あふれる演技 日本のエースが有終の美だ。27日に行われたシンクロナイズドスイミングのチーム決勝で、日本は2大会連続の銀メダル。前日(26日)のテクニカルルーティン(TR)で2位につけた日本は、フリールーティン(FR)で逆転を狙ったが、ロシアの壁に跳ね返された。今季限りでの引退を決めている立花美哉(29)、武田美保(27)=井村シンクロク=は、日本女子最多の通算5個目のメダルを獲得した。〔写真右:日本チームのリズム感あふれる演技。練習のたまものだ=共同。同下:銀メダルを首にかけ、笑顔でポーズ=AP



銀メダルを首にかけ、笑顔でポーズ 悔いは残さなかった。「サムライ in アテネ」がテーマ。8人で演じた日本チームを引っ張る立花、武田は、世界トップにふさわしいテクニックを見せつけた。メダルを懸けて戦う武士に変身、刀を抜くポーズからプールに飛び込み、重低音、和太鼓のリズムに合わせて、4分間、すべてを出し切った。ロシアには届かなかったが、文句なしの銀だ。

 「今はホッとしています」と立花。「すべて出し切らないと、帰れないと思った」と武田。練習に集中するため、今後のことは考える余裕はなかったが、そろって「五輪はひとつの区切り」と話す。美しい演技で世界を魅了し、文字どおり有終の美を飾った。

 3大会で通算5個目の五輪メダル。今大会でデュエット、チームともに銀メダルを獲得し、あの柔道女子48キロ級の谷亮子の通算メダル数を抜き去った。日本女子史上最多の栄冠を手に、胸を張って競技場を去る。

 29歳と27歳。力を維持するには、練習量を減らせない。筋力トレーニングの負荷も、昨年より5キロ増量。チームの白木仁トレーナーは「アスリートとしての能力は、他競技と比べても同年代で最高クラス」と証言する。練習で競泳をやれば、チームの若手を押さえ、2人が一番速い。誰もがギブアップした重量を、立花だけがスッと持ち挙げてみせたこともある。

 多いときは1日12時間も練習。たまの休日も「次の練習に万全で臨むため」に体のケアにあてた。試合で髪を固めるゼラチンは、専用シャンプーもあるほど強力で、「髪がバサバサになる」。“女の命”も犠牲にしてきた。トップでいるためには、それぐらい何でもなかった。

 引退は今季終了後になる。「今後もシンクロにはかかわっていきたい」と武田。未来予想図はシンクロ中心で描いている。「ワールドグランプリ」(9月17、18日、横浜)に出場予定。ロシアが不参加で、親善試合的な大会となるが、下手な演技はできない。「簡単に泳げるものじゃない。ウエートから始めないと」と立花。シンクロ史上、いや日本スポーツ史上に名を残した2人。プライドは持ち続けたまま、五輪挑戦劇を演じ終えた。



★井村コーチ「どうやってシンクロとかかわるか」

井村コーチ 過去6度の五輪に参加し、立花、武田の3度の五輪出場をすべて指導した井村雅代ヘッドコーチ(53)=写真=は、今季限りで代表チームの指導から退く意向を明らかにした。

 チームで銀を獲得した選手たちには、「精いっぱいやった。最後だから、とかセンチメンタルなことはない。高校野球じゃないんだから。ご苦労さん、という言葉もない。わたしも苦労しました」と、厳しさがウリのコーチらしい贈る言葉。自身の今後については「今後どうやってシンクロとかかわるかを考えている」と話した。

 ◆金子正子・日本水連シンクロ委員長 「ロシアは完成度が高かった。日本は井村コーチの根性があったからこそ、ここまで来られた。これからは若手のコーチ、選手の育成が必要になる」

出場メンバー

テクニカルルーティン(26日)
藤丸真世、原田早穂、川嶋奈緒子、鈴木絵美子、立花美哉、武田美保、巽樹理、米田容子(8人)

フリールーティン(27日)
藤丸真世、原田早穂、北尾佳奈子、鈴木絵美子、立花美哉、武田美保、巽樹理、米田容子(8人)



データBOX
立花と武田が通算5個目のメダルを獲得。2人は、96年アトランタでチーム銅、00年シドニーと今大会でデュエットとチームの双方で銀メダルを獲得した。柔道の谷亮子が通算4個(金2、銀2)で続いている。

シンクロ日本は、今回2種目とも2位。金メダルこそないが、通算メダル数を最多の11とし、実施6大会すべてでメダルを奪っているただ一つの国でもある。2位は米国の9、3位のカナダは8。



★徳島から“阿波おどり賞”だ

 徳島県の飯泉嘉門知事は28日、阿波おどりをテーマにした演技を披露し銀メダルを獲得したシンクロチームに、県イメージアップ大賞を贈ることを決めた。同賞は、さまざまな活動を通して徳島県の名を世界に広めた個人や団体が対象。特別感謝状などが贈られる。

★スキ見せずロシア金

 ロシアがスキのない演技を見せ、芸術点はオール10点満点。2大会連続で、2種目制覇を果たした。FRの演技開始直後に音楽が途切れ、やり直しになるアクシデントもあったが、まったく動じず。ベテランのキセレワは「あのアクシデントで、ハイになったので、逆によかったかもしれない」と笑顔。日本の井村コーチも「ロシアは強い。勝つには“本物”にならないと」と王国を称えていた。

★出来レース?

 シンクロはデュエット、チームともにロシアの金メダルで幕を下ろした。日本は両種目とも銀メダルだったが、採点基準が分かりにくく「初めから金はロシアと決まっていた」との声が続出、競技の将来性に疑問を投げかけた。

 「出来レースだ」と話すシンクロ界の関係者がたくさんいた。シドニー五輪以降ロシアが覇権を確立し、審判員にも「ロシア優位」の潜在意識が根付いたと言われた。「まず表彰式をしてその後に発表会をすべきだった」と皮肉る指摘もあった。

★銅の米国・クローは五輪後刑務所へ

 チームで銅メダルを獲得した米国メンバーの中に交通事故で過失致死の罪を犯し、10月から刑務所に入らなければならない選手がいた。タマラ・クロー。昨年2月に交通事故で同乗していたボーイフレンドとその教え子を死に追いやり、10月25日から収監されることが決まっている。同選手は演技後、涙にくれ「この1年半はジェットコースターのようだった。人生最悪のことと、最高のことがあったのだから」。表彰式後、鼻クリップをプールに投げた。これが最後の五輪となることを示す儀式だった。


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