【水泳】バタフライ山本が銀、9年越しの夢つかんだ

 ベテラン、大殊勲! 競泳男子200メートルバタフライ決勝で、山本貴司(26)=近大職員=が、1分54秒56で日本記録(1分55秒52)も更新、銀メダルを獲得した。パワーとテクニックが複合し、世界との差が大きかったこの種目で、日本男子のメダル獲得は56年メルボルン五輪の石本隆以来、48年ぶり。3度目の五輪で念願のメダルを手にした。競泳ニッポンを引っ張る主将が、元五輪女子自由形代表の妻・すずさん(29)=旧姓・千葉=が果たせなかった夢を、ついにかなえた。競泳陣は北島、森田に続き3日連続でメダル獲得となった。〔写真:前半3番手から、後半50メートルで激しく追い込んだ山本。ガッツポーズもパワフルだ=撮影・川村寧



 9年越しの挑戦。すべてをここで燃焼する。山本が表彰台へと続くレーンを激しく、そして滑らかに突き進んだ。

 技術に加え、何よりパワーが必要なバタフライは、体格に恵まれた海外勢の独壇場。日本選手は高く、厚い壁にはね返されてきた。メダル獲得は48年ぶりの快挙。隣のレーンを泳いだのは、多種目メダル獲得を狙っていた「怪物」フェルプス(米国)。この世界記録保持者を必死に追って、追って、粘り込んだ。

 「最高の気分。できれば(フェルプスを)抜きたいな、と死ぬ気で泳いだけど、もう少しでしたね」。堂々の勝負を演じた笑顔が輝いた。

 主将として、代表チームの支柱でもある。「緊張は最高のパフォーマンスをするための、ひとつの秘訣(ひけつ)。適度な緊張は必要だよ」と、3度目の五輪出場の体験を踏まえ、大舞台を乗り切るコツを、初出場選手らに伝授。代表チームの若手選手には、カリスマ的な存在として慕われ、男子100メートル平泳ぎで金メダルを獲得した北島も、「代表チームは、貴司さんがいるから大丈夫」と口にするほど。

 長年トップに君臨する男の支えは、イトマンSSの先輩で女子競泳界のエースだった妻・すずさんの存在だ。幼いころから同じプールで泳ぎ、一昨年に結婚。「(体調管理の)食事とか身の回りのことをやってもらってます」。水に入るときも、左手薬指には指輪をつけたまま。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪の代表で、激戦の自由形で孤軍奮闘したすずさんは、メダルには手が届かなかった。「自分には次の五輪はない。必ず結果を出す」。2人の夢のゴールにたどりついた。

 輝くメダル。29年前の8月11日に生まれた、日本でテレビ観戦したすずさんへ、6日遅れの最高の誕生日プレゼントとなった。

結城正


 山本 貴司(やまもと・たかし) 1978(昭和53)年7月23日、大阪・住之江区生まれ。26歳。近大附高−近大。現在は近大職員。3歳からイトマンSSで水泳を始める。アトランタ五輪から3大会連続出場。シドニー五輪は100バタで5位。03年世界選手権は200で2位、100で6位。両種目で日本新記録をマークした。一昨年、元五輪女子自由形代表のすずさんと結婚。1メートル78、73キロ。


★山本という男★

 ▼拠点 自由形の元世界女王エバンスを育てたマカリスター・コーチに師事。カナダを練習の基本拠点とする

 ▼趣味 米プロバスケットボール、NBA観戦。サーフィン

 ▼指輪 昨年の世界選手権で銀メダルを獲得したレースでは、ゴール後、指にはめた結婚指輪にキスするパフォーマンスをみせた

 ▼五輪成績 すべてバタフライで、アトランタは100=B決勝5位、200=予選敗退、シドニーは、100=6位、200=準決勝敗退。

 ▼向上心旺盛 遠征の帰りの飛行機で、現在セリエAのメッシーナに所属する柳沢敦と乗り合わせ、山本が話し込んでいたのを見た、個混代表の三木二郎がたずねた。「柳沢を知っているんですか? 『知らん。向こうも知らん。でも、聞いとかんと勉強にならんやろと…』。さすが大物です」。


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