2013年11月3日、巨人との日本シリーズを制し、抱き合う田中将大と嶋基宏の楽天バッテリー ■12月1日 「居場所がないじゃないかと受け取った。もう期待されていないんだなと」。プロ野球選手に限らず、職場に属する人間にとって、この状況はきつい。シーズン24勝無敗1セーブで球団ただ一人の胴上げ投手となれば、なおさらだ。田中将大が楽天退団を決めた。また日本一メンバーが去ってしまった。
巨人との日本シリーズを制した2013年、秋雨の仙台で、田中将と抱き合った嶋基宏も大減俸を飲めずに自由契約を選び、ヤクルトに居場所を求め、現在はヘッドコーチだ。シリーズMVPの美馬学はロッテにFA移籍。最大の功労者の田中将ですら「楽天で引退」がかなわなかった。
球団にも言い分がある。米大リーグのヤンキースから復帰した21年以降、4年間の推定年俸総額は25億3500万円。結果は20勝33敗。推定年俸2・6億円の今季は1戦1敗だった。楽天選手の年俸への満足度は12球団ワースト。「実質1回、15分くらい話した」と田中将は過程を明かしたが、是正する意図がなくても、球団が適正価格を示しただけだ。
「どこかで頑張ってほしい」と阪神が言えば、ソフトバンクは「獲得の対象になる可能性は高くない」。野球協約の減額制限(1億円超は40%)を大幅に超える年俸提示よりも厳しい現実が目の前にある。興味を持つチームもあるだろうが、他球団のコメントは寂しい。
「生え抜き」が次のステージに立てない。それが楽天。05年の球団創設から10人目の将だった今江敏晃氏が今季、1年で退任し、三木肇監督の再登板となった。歴史が浅いとはいえ〝生粋選手〟の指揮官就任は少ない。本来あるべき道筋から、また遠のいた。互いに実りなき別離なのかもしれない。(稲見誠)