「珍しない」ーその時の阪神・岡田彰布監督の表情が目に浮かぶ。若干胸を張っての完全否定は、自信と選手への信頼の裏返し。王者の懐の深さを見せつけた広島戦3連勝。スタメン野手は3戦とも同じ。しかも途中交代はなし。珍しい? と聞かれて、大阪弁で『珍しない』と返って来た。「それが普通やろ。接戦でいろんなことが起きたらアレやけど、絶対代走が要る選手もいない」と続けた。見極めから固定に入ったオカダ野球に隙はない。堂々の勝ち名乗りで、チームとしてCSファーストステージから突破した2014年以来、9年ぶり7度目の日本シリーズ進出を決めた。次の目標は1985年以来、38年ぶりの頂点。「普通の野球」で今度は日本一確率0%の狭き門に〝野手8人衆〟で挑む。
CS優勝のシャーレを掲げる阪神・岡田彰布監督(2023年10月20日撮影)
1973年から10年間のパの前後期制によるプレーオフを含めて、日本シリーズ進出をかけたCS無敗突破は、阪神で15度目。過去14回では日本一に輝いたのはセ・パで7度ずつ。ところがセ・リーグ1位に限ると、阪神のように引き分けなしの全勝進出は、過去3チームとも頂上決戦で敗退している。13年巨人(原辰徳監督)は楽天(星野仙一監督)に3勝4敗で、18年広島(緒方孝市監督)はソフトバンク(工藤公康監督)に1勝4敗1分で、22年ヤクルト(高津臣吾監督)はオリックス(中嶋聡監督)の前に2勝1分からの4連敗で敗れた。タイガースにとって過酷すぎる最後の関門となる。
広島相手に3戦とも野手に代打や代走を告げることはなかった。3試合のチーム打率は88打数17安打で打率・193の9打点(得点は10)。広島は96打数21安打4打点で打率・219。防御率は阪神1・33に対し広島は3・28。その差を感じさせない投手戦だった。しかし14四球1死球を取った阪神に広島は8四球。3戦とも逆転試合だった理由は、ここにもある。勝利打点は第1戦から「9番・投手」村上頌樹、「8番・遊撃」木浪聖也、「7番・捕手」坂本誠志郎。3戦連続して下位打線の3人が決勝点を叩き出した。接戦で終盤勝負になりながらも、負ける気はしなかった。「うまいこと点取ったと思うよ。相手を上回ったんちゃうかな」。岡田監督の言葉にも実感がこもる。
「静」の虎将に対し、2年連続日本一を目指すオリックス・中嶋監督は「動」と言われる。岡田監督との違いはロッテとのCSファイナルでも如実に表れていた。第1戦でセーブを挙げた平野佳寿を翌日のベンチ入りから外した。複数イニングを投げたわけではなく、球数は18球。アドバンテージを含めて2勝の余裕なのか。第2戦でのメンバー外はオカダ野球では考えられない。スタメンも同様だ。1番は中川圭太で固定されたが守備位置は中堅→一塁→中堅→中堅。3番の森友哉は右翼→捕手→右翼→右翼。二塁手は西野真弘→マーウィン・ゴンザレス→宜保翔→西野だった。DHがあり、相手投手との兼ね合いもあるが、阪神とは好対照。これもナカジマ野球の側面で、「固定」VS「流動」の激突となる。