秋の神宮球場(東京・新宿区)に明大旋風が吹いた。
9月26日、東京六大学野球の秋季リーグ早大2回戦。17-4で大勝し、勝ち点を獲得した明大・田中武宏監督(61)は、普段の勝利とはひと味違う喜びをかみしめ、舞台裏をうれしそうに明かした。
「『きょうは丸山のサヨナラヒットの〝いい気〟が、同じ一塁側ベンチにきている』と試合前の選手に話していたんですよ」
前日25日に神宮球場ではプロ野球ヤクルトがDeNAに1ー0で勝利し、2年連続のセ・リーグ優勝を決めた。明大からドラフト2位で今季入団した丸山和郁(かずや)外野手(23)が午後9時23分、0-0の九回に左中間を破るサヨナラ二塁打を放った。教え子の雄姿をテレビ越しに見守った田中監督は「サヨナラヒットを見て僕はすぐ寝ました。よく眠れました」と快眠を誘う活躍を喜んだ。
早大戦で2本塁打を含む5安打7打点の明大・宗山塁。右手を広げて「5」と、5安打を示した丸山の歓喜の一打から約13時間半後の午前11時。ヤクルトと同じ一塁側のベンチでプレーボールを迎えた明大ナインは燃えていた。春季リーグ戦で首位打者に輝いた宗山塁内野手(2年)=広島・広陵=は、「(丸山さんとは)1年間一緒にプレーして、勝負強い印象を持っていました。身近な存在だったので、すごく刺激になりました」と試合に臨み、右翼席への2本の3ランを含む5安打7打点と大活躍した。
1年春からリーグ戦に出場し、2年生ながらすでにプロのスカウトが注目する宗山は3学年先輩、丸山の魂を受け継ぐ存在だ。「いいバッターは長くボールが見られる。丸山にもつきっきりでやっていました」(田中監督)という指揮官とのマンツーマンのティー打撃で技術を磨く。田中監督があげるボールを黙々と打ち込む伝統の練習で成長し、丸山と同じ左打席からヒットを量産。早大を下す立役者になった。
優勝を決める適時打を放ちガッツポーズするヤクルト・丸山和郁=神宮球場(撮影・斎藤浩一)神宮球場では同じ日にアマチュアとプロの試合が行われることがある。ヤクルトが優勝を決めた25日もアマとプロの併用日で、プロの試合前に東京六大学の秋季リーグが行われていた。
丸山は試合前、明大のロッカールームにあいさつに訪れていた。前日24日は途中出場で4打数無安打、3三振と元気のなかった教え子に、田中監督は「絶対打てないという顔をしてやっているぞ。はったりでもいいから打てるような顔をしてやれ」と声をかけた。劇的な一打の裏には、恩師の言葉の力があった。
神宮球場だからこそ交錯する先輩と後輩の思い。互いが刺激し合って切磋琢真(せっさたくま)する空気が流れている。そんな紫紺の絆を感じた。(サンケイスポーツ・アマチュア野球担当)