DeNAの2年目、牧秀悟内野手(24)の躍進が止まらない。ドラフト2位で入団した昨季は数々の記録を塗り替えセ・リーグ新人特別賞に輝き、開幕から4番に座る今季は、5月に驚異の打率・329、25打点、8本塁打をマークするなど、打撃3部門でいずれも上位に名を連ねる大活躍を見せている。
そんな牧の〝商売道具〟であるバットは、中大時代から、職人・森崎寛樹氏の手によって削り続けられている。2人の出会いは、牧が長野から上京した大学1年時。森崎氏は知人に紹介され、牧のバットを担当することになった。最初に森崎氏がバットのこだわりを聞いた際、牧は『僕、バットは何でもいいです』と答えたという。森崎氏は「バットマンになりたくて、バットにこだわらなくてどうする」と指摘し、当時使用していたバットの芯の位置の分析に始まり、奈良から東都大学野球リーグのインターネット中継をチェックしては本人と意見を交換し微調整。〝二人三脚〟でつくり上げたオンリーワンのバットが、大学日本代表の4番を打ち、リーグ最高殊勲選手にも輝いた3年時に完成したという。
森崎氏は牧のバットを大学時代から削り続けている(シュアプレイ提供)メープル素材の牧のバットの特長は、打球部経が63ミリと一般的なものに比べて細いこと。牧に適した硬い材質のバットを、求める重量(大学時代は890グラム、プロでは870グラム)で実現するための工夫で、球の下数ミリを捉えたときに打球に角度がつきやすいというメリットもある。高い打率を残しながらも本塁打が打てる秘密はこの部分に隠されている。
もう一つは、左手の小指から薬指にかけて細くなっている特殊なグリップ。森崎氏いわく「素人が使うには難しい。きれいなインサイドアウトで振れないと、外の変化球を引っかけてばかりになる」と高い技術を必要とするが、ヘッドが出やすい利点があり、牧の特長的な逆(右)方向への強い打球を生み出す秘訣(ひけつ)となっている。
その特殊なバットをプロでも使い続けていられるのは、アドバイザリー契約を結ぶ三共スポーツ株式会社の野球ブランド「シュアプレイ」の存在がある。森崎氏のブランド「MRバット」にはNPBの公認がなく、提供が認められていなかった。そこで、NPBライセンスを持つシュアプレイに協力を依頼すると、まだプロ入り前の実力未知数にもかかわらず、二つ返事で了承。「プロに入れたら引き続きお願いしたい」と申し出た牧の願いをかなえた。
コロナ禍でメーカーもこれまでのような方法で選手との接触が難しい中でも、シュアプレイのスタッフ、そして森崎氏は現在も熱心にサポートを続けている。そして牧も、結果という最高の形で応えている。出会って6年目。固く結ばれた絆とともに、牧が球界を代表する強打者へと歩みを進めている。(浜浦日向)