日本シリーズ第3戦、三回、打席でバントの構えの伏見寅威=東京ドーム(撮影・松永渉平) (SMBC日本シリーズ2021、ヤクルト5-4オリックス、23日、東京D)第3戦で、今シリーズ初めて先制点を奪ったオリックスの三回の攻撃。無死一塁で8番・伏見は1球目から送りバントの構えをみせた。DH制のないセ・リーグ本拠地で、次打者は9番・田嶋。セのシーズン中の戦いなら8番に打たせて、凡打で1死一塁となっても投手の送りバントで走者を得点圏に進めるというのが定石だろう。しかし、交流戦以外にシーズン中に打席に立つ機会がないパの投手のバント成功率も未知数。ならば、8番打者で先に走者を確実に進めようという作戦だった。
これに対し、ヤクルト内野陣は1球目に一塁手・オスナが、2球目に今度は三塁手・村上が猛チャージするなど神経質すぎるほどのシフトを敷いた。この間にカウントは2-1となり、オリックス側からすれば「整った」状況。そこで4球目にバスターエンドラン。失策も絡んで無死一、三塁とし、1死満塁から宗の適時打で先制した。何とか最少失点で食い止めたが、1点を惜しんで大量失点を招く可能性もあった。まだ序盤。やらせていいバントもある。1死を取って9番から勝負する〝おおらかさ〟があって良い場面だった。
今シリーズ第3-5戦は東京ドームでの開催。新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初の日程より1週間遅れたことで、既にアマ野球の明治神宮大会の予定が入っていたヤクルトの本拠地・神宮球場は使用できなくなった。
そこで思い出されるのは1978年。ヤクルトとオリックスの前身球団である阪急との日本シリーズ。同年も大学野球と開催日が重複していたために神宮球場が使えず、ヤクルトは後楽園球場を本拠地とした。そして迎えた後楽園での第7戦。ヤクルト・大杉が放った左翼ポール際の打球が本塁打と判定されたことで、阪急・上田監督が1時間19分にも及ぶ猛抗議。同監督は2017年に80歳で亡くなったが、親族によると、現場から退いた後もビデオで同場面を何度も繰り返し見ては「棺桶に入っても、あの打球がポールの外を通っていくのを思い浮かべるだろうな」と話していたという。